AI(人工知能)や映像機器の技術が進歩し、人間の顔や属性、あるいは物体を見分ける画像解析の技術が広がっている。低コスト化が進んだことで、インフラ整備や公共サービスでも使われ始めた。こうした技術は、イベント運営や混雑度のチェックなど幅広いビジネスへの転用も期待できそうだ。
車を運転していると、旗や赤く光る棒状のライトを振りながら交通誘導をする、警備員を見かけることがある。近い将来、この警備員はAIに置き換わっていくかもしれない。見た目は単なる大型ディスプレーだが、その横のカメラが捉えた映像をAIが解析。周囲の混雑状況などを把握したうえで、車に「進んでください」「止まってください」と指示を出す。
そんな交通誘導のAIを開発するのは、KB-eye(山梨県中巨摩郡)だ。例えば、道路の片側が工事中で、上りと下りの交互通行になっているという場合。工事現場の両端に大型ディスプレーとカメラを設置する。ディスプレーやカメラは防水対策を施しており、雨天でも利用できる。サイネージは明るい日中でも視認できるように高輝度のLEDディスプレーを使っている。
交通誘導の警備は、警備業法上で2号業務と呼ばれる。車や人が通行する場所で事故の発生を防ぐ役目を担っている。単に「止まれ」「進め」を指示するだけではなく、上りの交通量が多い場合には優先的に上りの車を通行させて渋滞を防ぐ、自転車や歩行者が来たときには、先に行かせて車をしばらく止めるといった、状況に応じた誘導をしている。KB-eyeのシステムも、同様の柔軟な交通誘導ができる機能を持たせている。
以前から、距離センサーを使った同様のシステムは存在していたが「距離だけしか認識できないため、それが車なのか、自転車なのか、歩行者なのかを見分けることができなかった」(KB-eye代表取締役の橘田孝一氏)という。KB-eyeのAIは「車やバイクはほぼ100%認識できる。まれに人を自転車、あるいは自転車を人と認識してしまうことはあるが、いずれも97~98%の精度は出る」(橘田氏)。
片側交互通行の現場であれば、その両端にAIのシステムを設置し、その中央には、人間の警備員を1人配置する。AIが危険を察知したときなど、緊急時には人間の警備員に通知をする。こうすることで「従来は3人一組で警備をしていた現場でも、1人+機械で交通誘導をすれば、1.5人分ほどのコストで済む」と橘田氏は話す。
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