AI(人工知能)の高度化と映像機器の低価格化によって、「映像解析/顔認証」の技術が広がっている。モバイル決済の分野でもスマートフォンのカメラを使った顔認証の融合が進みそうだ。特集の第2回は「楽天ペイ」の実証実験、家電量販店のヤマダ電機が開始した「ヤマダPay」の顔認証技術を追う。
昼休みの昼食を終えた男性は、ポケットに手を突っ込んだまま席を立つ。レジに置かれたタブレット端末に顔を向けると、瞬時に「支払完了」とメッセージが現れる。即座に店員たちが「ありがとうございました」と男性に呼びかけた――。数年後には、そんな「顔パス」会計が当たり前になっているかもしれない。一歩先の将来像を形にするための実証実験を展開したのは、「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングス(HD)だ。
ロイヤルHDは、2017年11月から完全キャッシュレスの実験店「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリング・テーブル・パントリー)」を展開してきた。東京・日本橋馬喰町の1号店に続く2店目として19年12月にオープンした東京・世田谷の二子玉川店では、「楽天ペイ」と連携した顔認証決済の実験を3月中旬まで実施している。
実験の対象は近くに本社のある楽天社員など関係者のみ。それでも「一般の方が顔認証で決済しているのを見て、『こんなものがあるんだ』と興味津々だった。日本には今までなじみのなかった決済の形態だが、受け入れられる土壌はある」(ロイヤルホールディングス イノベーション創造部課長の名倉祐爾氏)と手応えをつかんでいる。
iPadを使って顔認証
ロイヤルHDがなぜ顔認証に取り組むのか。「現金やレシートの受け渡しは接客ではない」(イノベーション創造部担当課長の泉詩朗氏)という考え方があるからだ。混み合う時間帯など、業務が立て込む中で現金をやり取りすれば、どうしてもそこで金額を間違えないように、店員は神経を使う。ささいなことのようだが、その一瞬を削減できれば、アイコンタクトをする、一言声をかけるといった意識ができる。「不要な業務を極限まで外して、本来あるべき接客に注力してもらう」(泉氏)という狙いがある。
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