多くの家庭が日々の暮らしで困っていることを解決する、開始から4年も続く人気のサブスクリプションサービスがある。それが、クリーニング付きでワイシャツを宅配で貸し出す「ワイクリン」だ。ものを扱うサブスクとしては最古参組と言えるこのサービスは今なお堅調に利用者を増やしている。人気の秘密を探ると「成功するサブスク」を実現する3つのヒントが隠されていた。
「奇抜な機能で話題作りをするのではなく、とにかく地道にサービスの質を高め続けること。4年近くもサブスク事業を続けてこられたのは、そこに尽きる」。通信業界から脱サラしてワイクリン事業を立ち上げたNextR(東京・江東)代表取締役の長尾淳氏。社名に「次のレンタル」という意味を込めたように、生活必需品であるワイシャツに対して人々が抱えている課題を今までにない姿のレンタルサービスで解決しようと挑んでいる。
ワイクリンは、1カ月間の平日に着る20枚のワイシャツをクリーニングとセットで貸し出してもらえるサービスだ。専用倉庫から宅配で月末に届けられ、20枚着終わったら翌月10日までに専用の回収袋に入れて提携業者に送り返す。そこでクリーニングしてもらうのだが、並行して別の20枚のワイシャツが次の1カ月用として専用倉庫から届く。つまり、契約者ごとに合計40枚のワイシャツが用意され、自宅とクリーニング業者、そして専用倉庫を行ったり来たりすることになる。「買う手間」や「洗ってアイロンをかける手間」もしくは「クリーニング店を往復する手間」を無くす点に特徴がある。
用意するプランは全部で3つ。ワイシャツの選定がお任せになる「アソートプラン」(月額8800円税別)、好みのものを選べる「スタンダードプラン」(月額1万2800円税別)、国産の綿100%を使った1枚1万円程度の上質シャツをラインアップした「プレミアムプラン」(月額2万4800円税別)がある。料金には、往復の宅配送料も含まれている。
スタンダードの場合、用意するサイズは「S」「M」「L」「LL」「3L」の5種類。加えて色(白、青)、柄(無地、ドビー織、ストライプ)、襟型(レギュラー、ボタンダウン)などが違う全12種類を用意する。全て同じタイプを20枚選んでもよいし、「10枚、5枚、5枚」と数種類ずつを交ぜてもよい。次の月向けは、前月と同じセットでもよいし、違うセットに変えることもできる。
妻が口にした不満がきっかけで
日本初の“ワイシャツサブスク”は、妻と交わしたちょっとした雑談の中からアイデアが生まれたという。いつものように夜テレビを見ていた際、妻がこんな不満を口にしたという。「共働き夫婦の家庭では家事の分担が進んでいるのに、なぜうちではワイシャツのケアは私がやらねばならないの」――。
その言葉が耳に残った長尾氏は、気になって翌日以降いろいろと調べてみた。すると多くの共働き世帯では妻が洗濯やアイロンがけをやってストレスを感じている実態や、単身世帯の場合は毎週末にクリーニング店へ通うことを面倒に思っている実態が分かった。どうしても事業化したいと考えた長尾氏は、ヒントをくれた妻をなんとか説得して起業にこぎ着けた。
サービス開始から4年が経ったが、目の付けどころは間違っていなかったようだ。「急増こそないものの、毎月着実に新規ユーザーが獲得できている。驚くべきことに、1カ月単位で解約できるにもかかわらず、継続して契約する平均期間は8カ月。当初は3~4カ月とみていただけに想定以上の手応えを感じている」(長尾氏)。全体の約6割がスタンダードプランを契約しており、残りの1割がプレミアム、3割がアソートだという。
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