移動手段だけでなく住居や外食、レジャーなども包括する新種の複合型サブスクサービスがここに来て登場している。全日本空輸(ANA)や東急が展開しているものそれ。延長線上にあるのは、全てがサブスク化し衣食住をなんでもまかなえる未来の生活だ。複合型を目指す各社の狙いはどこにあるのか。最前線の様子を追った。
“サブスクリプション”の波が、ついにエアラインの世界にまで及びはじめた。ANAは2020年1月31日から、月額3万円(税込み)で国内線の指定便を2往復まで利用できるサブスクサービスの実証実験を始めた。今のところ20年3月末までの予定だが、ANAホールディングスの野島祐樹デジタル・デザイン・ラボ マネジャーは「20年4月以降も継続する予定」と話す。
特徴は、単体では提供されない点にある。月額4万円(税別)で全国各地にある25の「家」を自由に住み替えることができる多拠点生活サービス「ADDress(アドレス)」のオプションの位置付けなのだ。つまり、「住み替え」とその「足」となる航空券をセットにした、複合型のサブスクといえる。
なぜANAはアドレス(東京・千代田)と組むのか。野島氏は「地方の過疎化が進むなか、ローカル路線を維持していけるのか課題意識を持っていた」と話す。
地域に住む人口が減ると、旅客流動も減少。ANAが運航するローカル路線の便数を減らさざるを得ない。不便になった結果、若者が流出してさらに過疎化が進む負の循環に陥ってしまう。「定住人口を増やすのは容易ではないが、その地域を訪れる交流人口を増やすことは可能だ。観光だけでなく、旅するように様々な地域で暮らす多拠点生活もそのひとつ」(野島氏)。そこでアドレスに白羽の矢を立てた。
エアライン月3万円、は採算が取れるのか
サブスク型の多拠点生活サービスの先駆けであるアドレスだが、提供するのは住む場所だけであり、利用者は別途交通手段を手配する必要があった。「移動費も定額にできれば、多拠点居住のネックを減らせる」(野島氏)と考えた。
ただ、多くのアドレスの契約者は1つの地域に1週間ほど生活して次の場所に移動しているが、大半がコストを意識してLCCや鉄道、バスなどを利用している。運賃が高いANAは利用されていないわけで、値付けには配慮したという。
とはいえ月3万円で月に4回(2往復)乗れるということは、1回当たり片道7500円で利用できてしまう計算だ。ANAとしては破格の料金設定だが、果たして採算が合うのか。
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