新型コロナウイルスの脅威にさらされながら、我々はもう後戻りできない不可逆の未来に歩を進めている。「アフターコロナ」はどんな世界が待ち受けるのか。キーワードは「4つのY」。2030年の未来市場を予測した「消費トレンド総覧2030」を昨年6月に刊行した、D4DR社長の藤元健太郎氏に寄稿してもらった。

「コロナ後」の世界はどう変わるのか。4つのキーワードが浮かび上がった
「コロナ後」の世界はどう変わるのか。4つのキーワードが浮かび上がった

 新型コロナウイルスはまだまだ世界的に収まる気配を見せていない。いつか来る可能性は漠然と感じていたものの本当に来てしまったというこの感覚は、3.11の大震災の経験がまだ鮮明に脳裏に焼き付いている日本人にとっては、まさにデジャブな恐怖と言えるのではないだろうか。

 3.11は「数百年に一度の災害を前提に、社会システムをつくるべきか」という議論を我々に突きつけた。ただ近年の強力な台風などの自然災害の猛威は、地球環境の変化から、すでに毎年必ず起きるぐらいの前提になっている。そして今回の新型コロナも、WHOのパンデミック宣言が約10年ぶりと考えると、実は10年に1度は必ず起きてもおかしくないということでもある。

 つまり、我々が現在当たり前だと感じている日常は、「偶然の状況が長く続いただけ」と考えるべきだ。明日からの日常は「これまでの日常とは異なる、新しい日常」なのである。今回の新型コロナのような、地球上には恐らくありふれているが、人類にとっては未知のウイルスや菌たちとの共生を前提とした社会システムを我々は考え、企業活動や日々の生活を送るべきなのだろう。

過去からではなく未来からの思考が重要に

 2019年、我々D4DRのシンクタンク部門「FPRC」(フューチャーパースペクティブリサーチセンター)は、2030年の未来市場を予測した「消費トレンド総覧2030」を日経クロストレンドから刊行した。そこでも多くの未来シナリオを描いたが、今必要なのは過去からのリニアな変化の思考ではなく、まさに不可逆な未来からバックキャストで考える思考こそが重要と考えられる。そこで今回、アフターコロナ時代を考える上で、筆者は「Y」が付く4つのキーワード、「Traceability」(トレーサビリティー)、「Flexibility」(フレキシビリティー)、「Mixed Reality」(ミックスドリアリティー)、「Diversity」(ダイバーシティー)で整理し、消費トレンド総覧で描いた市場との関連性にも言及してみた。

1)Traceability(トレーサビリティー)

 新型コロナの感染者は、知らぬ間に不特定多数を感染させるリスクを持った人になってしまう。感染しても発症しない人も多い今回の新型コロナは、感染者の隔離施策がなかなか難しい。都市まるごと封鎖の過酷さも突きつけられた大きな課題だ。

 中国のように、可能な限り全ての国民の行動を管理する方向で考えるのも、パンデミックの状況では真面目に議論すべき考え方だろう。しかし、自由社会で生きている我々にとっての現実解としては、個人の行動の自由や匿名性も確保した上で、情報銀行などでID化された個人の行動履歴を保管しておき、リスクの大きさに応じて後からトレースする仕組みが必要になるだろう。

 また、人間のID管理だけでなく、社会のあらゆるリソースのID化と、それに伴うサプライチェーンマネジメントの最適化も急ぐべきだということが今回露呈した。マスク不足も深刻だが、在庫は十分にあるはずのトイレットペーパー騒動においては、石油ショックの頃と変わらない光景に唖然とした。現代社会のテクノロジーでは、生産から在庫、流通までもっときめ細かい管理ができていておかしくないはずであるが、この状況である。

トイレットペーパーの買い占めは、情報格差や生産流通の問題点も露呈した
トイレットペーパーの買い占めは、情報格差や生産流通の問題点も露呈した

 台湾では、マスクの在庫を国が管理して配布したことで、必要な人に行きわたらなくなることを防いだ。マスクを全量国が買い上げて、輸出も禁止した。国民身分証(日本のマイナンバー)の末尾番号で購入可能な曜日を決めて、保険証提示が無ければ購入できないようにした。まさに日本のマイナンバー制度の有効活用の見本とも言える。

 今後は、非常時に重要なマスクのようなさまざまな商品が出てくることが考えられる。異なるメーカーや流通の垣根を越えて、プロダクトの生産状況や倉庫や店頭など流通における在庫状況を非常時に共有できるようなオープンプラットフォームの構築も検討すべきだろう。そこからフードロス解消や新しいイノベーションサービスを生み出すインフラとしての期待もある。これからの資本主義経済における市場競争の鍵でもあるデジタルデータは、アフターコロナの世界では公共インフラとしての性格もより一層強くなる。前向きに産業構造を変えていく好機と考えるべきだろう(消費トレンド総覧では、社会リソースマネジメント市場、モノの統合サプライ市場として言及)。

 また、店舗の休業補償や税制優遇なども、これまでのような紙の書類申請ベースのような手続きが煩雑なやり方ではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を一気に進め、稼働状況に応じたダイナミックでクイックな支援策をどんどん投入することが喫緊の課題となっている。

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