3月25日、東京都の小池百合子知事らが発した「不要不急の外出自粛」要請により、3月28、29日の週末は首都圏を中心にヒトやモノ、経済の動きが止まった。特に首都圏などでは昨日、季節外れの雪が降ったこともあり、「することがないので、仕方なく家の中で新型コロナウイルスのニュースなどを見て過ごした」という人も多いだろう。
企業でマーケティングに携わる人なら、テレビ画面の中のとある変化に気がついたかもしれない。それは一部のCMがテレビ画面から消えたり、言い回しが変わったりしていたこと。2020年7月に東京五輪・パラリンピック(以下、東京大会)が実施されることを前提に制作された、東京大会スポンサーによるキャンペーンやブランディングのCMなどである。
きっかけは、3月24日夜に安倍晋三首相とIOC(国際オリンピック委員会)トーマス・バッハ会長がテレビ会議で協議したことだ。直後に開かれたIOC臨時理事会で「東京大会を1年程度延期」すると決まった。直前まで、結論を出すのは「今後、4週間以内」などとされていた。まさに急転直下の決定劇。これが関係する企業などに大小のハレーションを引き起こしている。その1つが、テレビCM素材の差し替えなどの対応だ。
最上位スポンサーに延期シナリオを事前に提示
何らかの事情で放送予定のCM素材を差し替える場合、一般的には放送予定日の2日前の24時が作業上のデッドラインになるという。一方、広告主側の都合による差し替えの場合、デッドラインは5日前の24時が通例だ。今回はどうか。4週間以内とされていたIOC判断が急に出た。通常の手続きなら間に合わない。
この点について、オリンピックビジネスにかかわっているある専門家はこんな解説をする。「今回、(「ワールドワイドオリンピックパートナー」と呼ばれる)最上位のスポンサーにはIOCから事前に、1年延期、2年延期のケースなど複数のシナリオがひそかに通知されていた」と。そのため、事前にさまざまな手が打てたという見立てだ。ワールドワイドオリンピックパートナーは海外企業が多く、日本企業はパナソニック、ブリヂストン、そしてトヨタ自動車の3社となる。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー