米国でも新型コロナウイルスの影響がイベント開催で顕在化している。最後まで開催を掲げていた、デジタルメディアの総合展「SXSW 2020」は市当局のキャンセルでやむなく中止となった。こうしたなかでも決行する13万人イベントもある。

SXSW開催中のオースティン市内では、さまざまな関連イベントが行われる
SXSW開催中のオースティン市内では、さまざまな関連イベントが行われる

 SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)は直前まで開催を表明していたものの、3月6日に共催する米テキサス州のオースティン市当局が中止を判断。SXSWの運営会社は全体の開催中止を余儀なくされた。

 SXSWはメイン会場となるコンベンションセンターだけでなく、周囲のホテルやライブハウスなど、街全体を利用して開催するのが特徴だ。道路の規制や警備などで市当局の協力が欠かせないのが背景にある。

13万人イベントが米ラスベガスで開催

ラスベガスで開催した建設機械関連のイベント「CONEXPO」
ラスベガスで開催した建設機械関連のイベント「CONEXPO」

 こうしたなかでも開催に踏み切る大型イベントもある。

 3月10日から米ネバダ州ラスベガス市のコンベンションセンターで開催した、建設機械関連の総合イベント「CONEXPO」である。日本からもコマツやブリヂストンなどが出展者として参加しているが、「全体として展示スペースには大きな空きはなかった」(参加者)という。

 3年に1回の大型イベントであり、前回は約13万人が参加したという。同参加者は「各社ともブースに大型の建機を用意するなどしている。準備に大きな予算と時間をかけているので、中止は難しかったのではないか」と見る。もっともアジア系の参加者の姿はほとんど見られなかったという。

CONEXPOの会場に設置した感染対策の看板
CONEXPOの会場に設置した感染対策の看板

 イベント会場やウェブサイトでは握手やハグ、キスなどを禁止する方針が示されており、会場のドアには開閉を行う担当者が配置されていた。ただ、会場内ではいたるところで握手やハグをする姿が見られた。この参加者は、30分に1回ジェルで消毒したり、参加日程を短縮するなどで対策したという。

デジマイベントもシリコンバレーで開催予定

MarTechの運営会社が示した開催に向けた判断基準
MarTechの運営会社が示した開催に向けた判断基準

 米カリフォルニア州のシリコンバレーエリアでは、米グーグルや米フェイスブックなどテック大手が5月までのイベントを軒並みキャンセルしている。こうしたなか、デジタルマーケティング関連の「MarTech」は4月15~17日、サンノゼ市のコンベンションセンターで予定通り開催する計画だ。

 シリコンバレーで開催を表明している数少ない大型イベントだが、MarTechの主催者は以下のように対策を説明をしている。

・CDC(米疾病管理予防センター)対策のレベル3国からの登録を許可していない
・参加者の96%がリスクの低い、米国、カナダである
・ノーハンドシェイクのポリシーを定めた

 これ以外にも各機関のサイトへのリンクを掲示し、注意を呼びかけている。今後、サンノゼ市など地元行政側との調整で方針が変わる可能性もあるだろう。

ついに大型イベントでも感染者

RSA Conference 2020の会場。各所に消毒用のジェルが設置されていた
RSA Conference 2020の会場。各所に消毒用のジェルが設置されていた

 一方、2月24日から米カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催したサイバーセキュリティーの総合展「RSA Conference 2020」には、新型コロナウイルスの感染者が参加していた。RSA Conferenceの運営団体は3月10日、「RSA Conference Update」とのタイトルで参加者にメールを送信。参加者のうち2人が新型コロナウイルスに感染していたことを通知した。

 RSA Conferenceはサンフランシスコ市の大型イベントホールのモスコーニセンターで開催し、約4万人の参加を見込んでいた。サンフランシスコ市の安全宣言をよりどころに開催したが、開催2日目の25日に同市のロンドン・ブリード市長が感染拡大のリスクが高まったとして非常事態宣言を発令していた。

 会場ではいたるところに消毒用のジェルを置かれ、ホテルとのシャトルバスなどでは座席の肘掛けを1日4回消毒したという。消毒用のジェルをノベルティーとして配るブースもあった。

 該当の参加者がRSA Conferenceで感染したのかなどの詳細は不明だ。主催者からのメールには、感染者の属性や行動などについての説明はない。

エクサビームのツイート
エクサビームのツイート

 米メディアによると感染が判明した2人は、シリコンバレーに本社を構えるセキュリティー・ソリューション・ベンダーの米エクサビームという会社の従業員。イベントから米国内の自宅に戻った後に感染していることが分かったという。同社のTwitterでも感染者が出たことを報告している。

経済効果370億円吹き飛び、運営会社リストラ

SXSWのメイン会場であるコンベンションセンター(2019年3月、米テキサス州のオースティン)
SXSWのメイン会場であるコンベンションセンター(2019年3月、米テキサス州のオースティン)

 大型イベントの中止が地元経済に影響を与えており、問題が表面化し始めた。

 例えば、SXSWの同市への経済効果は3億5500万(約370億円)ドルとも言われるが、それが見込めなくなった。さらに地元オースティンのメディア「CultureMap」によると、SXSWの運営企業はイベントの中止によって、音楽部門を中心に3分の1の従業員を解雇したという。

 イベントの中止は、運営や参加企業だけでなく、宿泊やレストランなどの地元企業、航空などの交通事業者、さまざまな経済に影響を与えている。新型コロナウイルスの真のインパクトはこれから現れてくるだろう。

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