ハイプ・サイクルでこれから期待値が上がってきそうな技術に、脳科学やAIに近い領域のものが多い。脳にAIチップを埋め込むと、寝ている間に知識が増える――。そんな未来が実現するかもしれない。パロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)と、東京大学大学院工学系研究科・松尾豊教授の対談の後編。

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松尾 「ニューラリンク」など、ブレインマシンインターフェース系の企業はどのようなことをやろうとしているのでしょうか?

石角 IoT系のプロダクトを作っている会社があるようです。例えば、ヘッドホンの音量を上げてほしいと思っているのを予測してわざわざ声や指で指示を出さなくても、音量を上げられるようなデバイスを作る。あるいは、そういったチップを作る、OEMでそういった技術をいろんなメーカーに拡販する、といったものです。もしかすると、ロボット開発にも生かせるかもしれません。さらに、こういったデバイスをウエアラブル系に応用して、脳にAIチップなどを埋め込むといったことも可能かと。松尾先生は脳に「埋め込む」となったら、どう思われますか?

松尾 それは安全性が高くないとダメですね。

石角 はい。安全性の確保がないと脳に埋め込むのは、とても抵抗がありますよね。最近、ウエアラブルといえば、乳がんを検知するセンサーが下着に付いているものや皮膚に貼るパッチなどがあるようです。そういった着用・貼付系のものは全く抵抗ないのですが、自分の体に埋め込むとなると難しいですね。犬猫にマイクロチップを埋め込むのとは違って、人に対してはまだ先な感じもします。

松尾 人の脳などに埋め込むタイプの商品化は先の話でしょうね。

石角 ウエアラブル市場の現状を見ると、シェアの大半を占めているのはアップルで、最近ではワイヤレスの「AirPods」が大成功しました。指輪型のウエアラブルには「OURA RING(オーラリング)」というものもありますが、これは24時間装着してBPMなど体の生理的信号を測定するものです。また、今私が着けている「Apple Watch 6」では血中酸素濃度も測定できます。

松尾 それはすごいですね。どのように活用しているのでしょうか?

石角 コロナ禍なので、血中酸素濃度が95%以下にならないように毎日モニタリングをしています。仮に新型コロナに感染していれば、血中酸素濃度が低下している可能性があるので、症状が出なくても感染の有無を判断する目安にはなります。

松尾 なるほど。血中酸素濃度ではないですが、日本の「クォンタムオペレーション」というベンチャー企業が血液検査をせずに血糖値がとれる時計型のデバイスを開発していますよ。

石角 血液検査せずに血糖値がとれるなんて驚きです。そんなウエアラブルのデバイスがあれば、食後に血糖値をピンポイントに測定してスパイクが起きているかどうかなど、しっかりと血糖値のモニタリングができますね。

松尾 開発された時計型のデバイスは光を当てて、その波長で血中の糖分が分かるらしいです。優れた技術開発ですよね。もしかしたら血糖値はキラーコンテンツになりかねないなと思います。

松尾 豊氏
東京大学大学院工学系研究科教授
1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所研究員。05年8月よりスタンフォード大学客員研究員を経て、07年より、東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。14年より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 グローバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(02年)、創立20周年記念事業賞(06年)、現場イノベーション賞(11年)、功労賞(13年)の各賞を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、10年から副編集委員長、12年から編集委員長・理事。14年より倫理委員長
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