日本政府が検討しているデジタル庁の創設が話題になっている。新庁への期待感や課題、さらには新政権の印象について、米シリコンバレーを拠点に企業のAI(人工知能)活用・導入を支援するパロアルトインサイトの石角友愛CEO (最高経営責任者)と、ディープラーニング分野で日本をリードする東京大学大学院 工学系研究科の松尾豊教授が議論する。
石角 日本で話題になっているデジタル庁ですが、各省庁にある関連組織を一元化し司令塔機能を持たせるとのことです。最初に何に取り組むべきだとお考えですか?
松尾 直接話を聞いているわけではありませんが、政府が最初に取り組もうとしているのが、省庁間のシステムの統一だと思います。現在、省庁ごとにシステムが違うので、バラバラで横断的につながっていません。その背景には、各省庁がそれぞれ指定のシステム業者を抱えており、調達先の統一化が図れない弊害があります。まさにそこをまず一本化していかないと先は進まないです。
石角 システムの調達先の統一化がまず必要だということですね。
松尾 そうですね。分かりやすいところでは、各省庁の入退館の方法もバラバラです。ある省は、カードに所属や名前などを書かせたり、別の省では入館番号を事前にメールで知らせていただいて、その番号を伝えるだけでよかったりするところもあります。ある人がどの省庁に出入りしたのかというような横断的な把握はほぼ不可能です。こうしたこと一つ取っても、システムやデータが統一されていないのですが、当然、ある手続きをしたい人や要望を持った人は他にも関係する省庁がありますから、うまく全省庁のシステムを統一していけば、利用者にとっても把握する側にとっても分かりやすい仕組みになっていくかと思います。
東京大学大学院工学系研究科教授
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