米国でGAFAらビッグテック企業が脅威となる中で、どうすれば高い倫理規範や社会性を持った起業家を育成することができるか。松尾研究室で挑戦しているのが、新たな教育プログラムの作成だ。最初にAI(人工知能)を学び、リーダーシップや法律、会計なども身に付けられる「起業クエスト」で、次世代の起業家を育てる仕組みを作ろうとしている。パロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)と、東京大学大学院工学系研究科・松尾豊教授の対談の後編。

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石角 フェイスブックをはじめとしたビッグテック企業は昔から脅威ではありました。ただ、公聴会に呼ばれるなど今回やり玉に挙がったのは、「大きくなりすぎた」という点でしょうか。要するに、(前編で取り上げた)「Mindf*ck」であるように、フェイスブックが社会のインフラと化し結果的に政治と密着し、ものすごく強い権力を持つようになってしまったということ。月間30億人という人々の全ての情報を集約するプラットフォームが一企業によりコントロールされていることに対する懸念というのは、ここ数年で強まってきているようです。

松尾 そうですね。

石角 特に「Mindf*ck」の件以降、プラットフォーマーだからといって、フェイスブックほどの規模になってしまうと、単純に「中立に徹して介入しない」とは言えないのではないか、という風潮になっています。例えば、ザッカーバーグ氏は、「われわれはファクトを消す側の立場の人間ではない」と言って、ヘイトスピーチにつながるようなトランプ大統領の発言をフェイスブック上でそのまま表示させておきました。この対応は物議を醸し、フェイスブックが言論の自由に対する理想論が根強いシリコンバレーに本社を置くといえども、広告主からのボイコットなどにつながる問題にまでなったのです。

松尾 フェイスブックが「大きくなりすぎた」という点は否めませんが、結局、ビッグテック企業の“脅威”を社会が監視しようと思って、公聴会に呼び出して話を聞くというのはあまり意味がないように感じます。

石角 確かに。公聴会に呼び出すのは、心理的なプレッシャーをかけるというパフォーマンスなのかもしれません。

松尾 パフォーマンスにとどまらず、本当はアルゴリズム的に問題がないかをチェックする仕組みが必要だと思います。アルゴリズム的な新しい監査制度というんですかね。あと、どこまでやってよくて、どこまでやってはいけないのか。きちんとした線引きをするのが大事です。

 ある意味、「商品を買わせる」ための、よいマーケティングというのは、ほとんど洗脳に近いもの。昔から企業はあの手この手を使って躍起になっていることです。一方で、商業的なことと政治的なことは、やっぱりだいぶ異なる話だと思います。データや新しい技術を政治的な目的に使ってよいのか。どこまで使ってよいのか。それに対して有権者は知らされる権利があるのではないか。民主主義の根幹を成す部分との線引きはしっかりすべきだと思います。

松尾 豊氏
東京大学大学院工学系研究科教授
1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所研究員。05年8月よりスタンフォード大学客員研究員を経て、07年より、東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。14年より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 グローバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(02年)、創立20周年記念事業賞(06年)、現場イノベーション賞(11年)、功労賞(13年)の各賞を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、10年から副編集委員長、12年から編集委員長・理事。14年より倫理委員長
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