新型コロナウイルス感染症の影響でエドテック(EdTech・教育×テクノロジー)化された各国の教育業界。今回はコロナ禍で注目されるオンライン教育や将来におけるAI教育の在り方などについて、米シリコンバレーを拠点に企業のAI活用・導入を支援するパロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)と、ディープラーニング分野で日本をリードする東京大学大学院工学系研究科・松尾豊教授が議論する。

石角 日本のエドテックについて、まずK12(幼稚園年長から高校3年生)にフォーカスしてお話ししたいです。

松尾 文部科学省がプログラミング教育に取り組んでいますが、もちろん大変良いことだとは思います。ただ、日本は多くの業界でいろんな利害関係が複雑に絡んでいると感じます。プログラミング教育に関していえば、まず問題点として考えられるのは、そのプログラミングを誰が教えるかということです。

石角 プログラミングを教える先生がいないんですよね。

松尾 そうです。本来ならば外部のプロがプログラミングだけを教えていればいいのですが、外部の人が教えることに関して、現場の抵抗感は大きいですよね。そうなると、プログラミングをやったことのない教員が、自分で勉強して教えないといけなくなるわけです。結果的に、外部の事業者からひとまず体裁を整えられる、あまり効果のないものを導入してしまうようなことにもなりかねません。

松尾豊
東京大学大学院工学系研究科教授
1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所研究員。05年8月よりスタンフォード大学客員研究員を経て、07年より、東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。14年より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 グローバル消費インテリジェンス寄付講座 共同代表・特任准教授。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。人工知能学会からは論文賞(02年)、創立20周年記念事業賞(06年)、現場イノベーション賞(11年)、功労賞(13年)の各賞を受賞。人工知能学会 学生編集委員、編集委員を経て、10年から副編集委員長、12年から編集委員長・理事。14年より倫理委員長

石角 プログラミング教育導入のため、日本はとりあえずiPadを公立の小学校に配布するという名目で予算をつけました。iPadを配布して何をするかといった議論が活発化していなかった中で、今回新型コロナの影響で日本も3月から全国一斉休校となり、小・中学校などオンライン化が迫られました。特に公立でもこの2、3カ月でオンライン化が進んだのではないかと思います。

 例えば、公立小学校でSlackを連絡手段として使い始めたといいます。これまで日本の小学校は「連絡帳」で家庭と先生とのやり取りが基本でしたが、新型コロナで休校になってからいやが応でもデジタル化を迫られて、Slackで連絡が来るようになったという話を聞くと、本当にすごいことだと。

 政府が5月25日に緊急事態宣言の解除を発表して、6月ごろから各学校が授業を再開しました。元に戻るのか、何かしらのデジタルツールが定着するのか、あるいはハイブリッドモデルが生まれるのか。その中で松尾先生がおっしゃったプログラミング教育と、どう掛け合わせていくのか、生産性の高い議論が出てくるといいなと思っていましたが。

松尾 残念ながら休校中は、ほとんど何もやっていないのと同じだと個人的には思います。親が監督して自習するというような、結局は家庭任せになっているように思います。おそらく海外の状況とかなり違います。

石角 私の知る限り、米国ではGoogleクラスルームがあり、毎日娘が朝9時になるとここに行きます。Googleクラスルームへ行くと担任の先生が待っていて、そこでログインしないと誰が来なかったかというのが分かります。また、数学専用のeラーニングのプラットフォームを使って数学のクイズをやったり、スタンフォード大が公開している小学生向けの数学eラーニングの授業に参加したりしていました。

 結構いろんなツールがあり、公立学校でもオンライン教育が充実していて。ただやっぱり、実際に学校に通って対面授業と比べたら全然違いますよね。松尾先生のお子さんは休校中、どうされていましたか?

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