新型コロナウイルス対策にAI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)をどう活用するか。海外に比べて法律や制度が未整備の日本の現状について、米シリコンバレーを拠点に企業のAI活用・導入を支援するパロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)と、ディープラーニング分野で日本をリードする東京大学大学院工学系研究科・松尾豊教授が議論する。

石角 前回に続いて台湾当局の対応について、お話しします。私が一番面白いなと思ったのは、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」における対応です。

 ダイヤモンド・プリンセスは日本に到着する前に台湾へ寄港していたのです。日本に着いて、感染が広がったとニュースになった後、台湾当局はダイヤモンド・プリンセスから降りた乗客が、台湾のどこに行ったのかをモバイル情報で把握。感染リスクのある台湾市民全員にテキストメッセージを送っています。「何月何日何時にこのエリアにいた人は、リスクがあるから病院に行ってください」と。モバイルとロケーションデータを活用して、ここまでやるというのはすごいですよね。

 日本はプライバシーの問題で難しいかもしれませんが、感染経路を可視化できないのは大きな問題です。日本でもこれを機にロケーションデータなどの活用について議論がなされるべきでしょう。

 松尾先生は、政府のさまざまな会議に出席されていますが、そのような動きはありますか。

松尾 目の前の状況にどう対応するかが中心で、先を見据えた議論は少ないですね。日本ももっと、そのような動きをしていくべきだとは思いますが、いかんせん準備が整っていない。そもそも政府や医療などのシステムが統合されていないと、機動的なサービスをつくれません。日本では歴史的に「自分の情報を政府に過度に使われたくない」と感じる人が多い。それがさまざまなシステムが分散している要因の1つになっています。

石角 あえてディセントラライズ(非中央集権化)しているということですね。

松尾 ITに対する理解が社会全体で低いこともあります。一方で、国が情報を握ったときにどういうことが起こるか。その心配がすごく大きい国なのだと思います。

 『サピエンス全史』の著者として有名なユヴァル・ノア・ハラリ氏が「監視社会と地域の分断とのどちらを取るか」というニュアンスのことを言っています。監視社会、つまり国が力を持ちすぎることが本当にいいのか。一考すべきテーマです。

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