※日経トレンディの記事を再構成

国内1900万ダウンロードを突破しているスマートフォンゲーム『Fate/GrandOrder(以下FGO)』。ファンを増やし続けるのみならず、様々なビジネスにインパクトを与え、経済圏を拡大した理由を探る特集の2回目。歴史書籍が飛ぶように売れ、書店フェアも大成功、ホテルが満室になった理由とは。

4周年記念フェスの様子。2019年8月3~4日に千葉市の幕張メッセで行われ計約2万5000人が集った
4周年記念フェスの様子。2019年8月3~4日に千葉市の幕張メッセで行われ計約2万5000人が集った

予期せぬFGO効果が起きた 歴史本が突然売れ始める

 『FGO』は、開発元も予期せぬところでビジネス上の恩恵をもたらした。戎光祥(えびすこうしょう)出版では、2013年に発行した『正伝 岡田以蔵』(松岡司著)が通常の歴史書籍の5倍売れたのだ。

 きっかけは、自社のTwitterアカウントに寄せられたメッセージだった。「FGOで岡田以蔵のイベントが始まるので、宣伝したほうがいいですよ」とのアドバイスが来たのだ。そこで18年6月13日に開催されたイベント「ぐだぐだ帝都聖杯奇譚」の開催に合わせてTwitterで告知をしたところ、『正伝 岡田以蔵』が1カ月足らずで売り切れ、4刷目の増刷が決まった。戎光祥出版編集長の丸山裕之氏は「社員一同、全く想定外の売れ方だった」と語る。

 その後、岡田以蔵とのコラボ帯の製作を開始。著書の松岡司氏も乗り気で、同年8月の5、6刷のタイミングからコラボ帯を使ったところ、「経験したことが無いほどのスピードで売れた。購入者に『作中の岡田以蔵がFGOのキャラのまま』などと、喜んでもらえた」(丸山氏)。

 購入者の多くは『正伝 岡田以蔵』だけでなく、『図説 坂本龍馬』(小椋克己・土居晴夫監修)など、他の偉人の書籍も購入。複数冊を買う客も目立った。通常、書店からの注文が9割を占めるところ、自社サイトでの個人注文が全体の半数を占めていたそうだ。

 「購入者の8割が女性だったことに驚いた。史実に基づいた堅い印象の書籍を出版している会社なので、男性の顧客が多い。岡田以蔵効果で、10代20代や女性も購入客になり、新規顧客の獲得につながった」(丸山氏)。

岡田以蔵
「わしが土佐の岡田以蔵じゃ。人斬り以蔵のほうがとおりがえいかの。
 なんじゃと? アサシン……? 勘違いすな、わしのクラスは『人斬り』じゃ」


プレーヤーの間で人気が急上昇し、「18年に登場したなかで、最も聖杯が捧げられたサーヴァント1位」に輝いた。豪勇な見た目に反し、笑顔がかわいらしく寂しがり屋な一面をのぞかせる、愛らしいキャラクター。歴史上の岡田以蔵は幕末四人斬りの一人であり、坂本龍馬らと一緒に土佐勤王党の志士として活躍した
レアリティ★★★  クラスアサシン
【イラスト】lack 【声】吉野裕行
こんなに広がる! FGO×ビジネス
 戎光祥出版 
重厚な歴史書の重版が相次ぐ

 人気サーヴァントの一人、「岡田以蔵」について書かれた歴史書が、イベントを機に突然売れた。増刷時に『FGO』の帯を付けて売ったところさらに伸び、他の歴史書も一緒に売れるという集合ヒットになった。

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