米シアトルに形成されたAI(人工知能)のエコシステム。ここまで米中のテックジャイアントが集結し、スタートアップがぞくぞくと生み出されてきた理由を紹介してきた。最終回となる今回はシアトルのAIエコシステムに参入した日本企業や日本人を紹介する。

 シアトルのAIやクラウドのエコシステムの優位性に気づく日本企業や日本人が増えている。実際に進出を果たした企業や団体から、決断のポイントやメリットを得検証する。

アマゾンとの共同開発に乗り出すデンソー

デンソーはアマゾンの本社近くにシアトルの研究開発拠点を開いた。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などのプラットフォーム開発に取り組んでいる
デンソーはアマゾンの本社近くにシアトルの研究開発拠点を開いた。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などのプラットフォーム開発に取り組んでいる

 シアトルのダウンタウンにあるオフィスビル。2019年6月にデンソーが開設した研究開発拠点が話題となっている。その場所がアマゾンの本社オフィスの目と鼻の先にあるからだ。6人の体制で、現地でもエンジニアを採用している。

 ソフトウエアやサービスなどの研究開発拠点として位置づけており、移動をサービスとして実現するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などのプラットフォーム開発に照準を定めている。

 デンソーはシリコンバレーにも研究開発拠点を持つが、シアトルの拠点はパートナーとの連携で大きな役割を担う。「クラウドやIoTなど最先端の企業、スタートアップ、大学などとの協業にも取り組んでいく」(同社)という。

 一方で、トヨタ自動車がアマゾンの自動車向け音声AIの「Echo Auto」を採用している。現在はスマホを使った外部接続での利用だが、今後レクサスなどのトヨタ車に組み込んでいく。

デンソーとアマゾンによる提携サービスを利用した新型保険のコンセプトを説明するあいおいニッセイ同和損害保険の担当者(2020年1月、米ラスベガスのCES)
デンソーとアマゾンによる提携サービスを利用した新型保険のコンセプトを説明するあいおいニッセイ同和損害保険の担当者(2020年1月、米ラスベガスのCES)

 2020年の年初に米ラスベガスで開催されたデジタル技術の総合展示会「CES」。アマゾングループの自動車向けの商材を集めたブースに、デンソーの姿があった。自動車の走行情報を集約して処理する車載機器を開発し、外部の会社にプラットフォームとして提供するというものだ。車載機器側で膨大なセンサー情報を処理し、必要な情報だけをアマゾンのクラウドサービス側に連携させるというコンセプトである。

 例えば、CESではあいおいニッセイ同和損害保険がそれらの仕組みを活用。ドライバーごとにリスクを評価する自動車保険について説明していた。

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