手軽に買い物ができるECに対抗し、リアル店舗が生き残るには、足を運ばせるための魅力的な体験が求められる。アウトドア体験を巧みに取り入れて成功しているのが、2019年11月、南町田にオープンした商業施設「グランベリーパーク」だ。

「モンベル グランベリーパーク店」は、クライミングピナクル(尖塔)とカヤックなどを体験できる池を備える
「モンベル グランベリーパーク店」は、クライミングピナクル(尖塔)とカヤックなどを体験できる池を備える

 本特集の第1回から第3回までは、アウトドアブランドの日常での新市場開拓を追ってきた(詳しくは特集「アウトドアブームが生む新市場」を参照)。最終回となる今回は、逆にアウトドアとは一見無縁な企業がアウトドアを取り入れて成功している例を紹介する。

 東急モールズデベロップメント(東京・渋谷)が運営するアウトレット複合商業施設「グランベリーパーク」(東京都町田市)は、19年11月13日の開業から2週間で来場者が100万人、2カ月で400万人を超えた。営業面積は約5万3000平方メートル、店舗数は都内最大の241店舗、その内の約100店がアウトレット店だ。

 グランベリーパークができる前に同社が運営していた「グランベリーモール」は店舗面積が約3万3400平方メートル、店舗数約100店、来場者数は年間700万人だった。営業面積や店舗数が異なるため単純な比較はできないが、グランベリーパークが大きな成果を上げていることが分かる。「開業景気はある程度見込んでいたが、2カ月たっても勢いが継続していることは想定を超えている」と同施設を運営する東急モールズデベロップメント グランベリーパーク マネジメントオフィス総支配人の青木太郎氏は話す。

東急モールズデベロップメント グランベリーパーク マネジメントオフィス総支配人の青木太郎氏
東急モールズデベロップメント グランベリーパーク マネジメントオフィス総支配人の青木太郎氏

 店舗数は大幅に増やしたものの、強い危機感があった。「インターネットで買い物する人が増えて、商業施設は厳しい状況にある。わざわざ足を運ぶ意味を発信しなければ多くの人を集められない」(青木氏)。そこで、青木氏は、この施設に来なければ手に入らない魅力的な体験をアピールすることにした。 

アウトレット複合商業施設「グランベリーパーク」。平日の午前中から多くの客が訪れる
アウトレット複合商業施設「グランベリーパーク」。平日の午前中から多くの客が訪れる
施設内はペット同伴可能なので、愛犬と散歩の途中に立ち寄る客も多い
施設内はペット同伴可能なので、愛犬と散歩の途中に立ち寄る客も多い

 体験の目玉は併設する公園とアウトドアブランドとの連携だ。グランベリーパークは、東急と町田市が共同で開発したエリア「南町田グランベリーパーク」の中にある。このエリアは、田園都市線南町田グランベリーパーク駅(旧・南町田駅)に直結しており、面積約7万平方メートルの「鶴間公園」を含む。グランベリーパークは、アウトドアブランドと連携しつつ、隣接する鶴間公園を有効に活用して、様々な体験イベントを週末ごとに開催しているのだ。

 例えば、同施設に入るモンベルとスノーピークは19年11、12月の週末、公園にテントや椅子を設置し、休憩場所として開放。同時にスノーピークはテントの設営講習やたき火体験会などを開催した。「公園とそこで得られる体験が、グランベリーパークに足を運ぶきっかけになる。公園での体験を通してアウトドア用品や飲食の購買を喚起できる」と青木氏は語る。

 一方、アウトドアブランド側にとっても実際のアウトドアに近い環境で商品を展示したり、買い物客に使用してもらえたりするメリットは大きい。店舗スタッフが自ら商品の魅力を伝え、新規客を獲得するきっかけになるからだ。商業施設側とアウトドアブランドがWin-Winの関係を構築できたことが集客に成功している要因だ。

商業施設に隣接する「鶴間公園」。広いスペースを活用し週末にはアウトドアイベントを開催する
商業施設に隣接する「鶴間公園」。広いスペースを活用し週末にはアウトドアイベントを開催する
グランベリーパークに隣接する鶴間公園でテント設営の講習イベントを実施した
グランベリーパークに隣接する鶴間公園でテント設営の講習イベントを実施した
週末のイベントは、集客効果が高い(イベントの写真提供/東急モールズデベロップメント)
週末のイベントは、集客効果が高い(イベントの写真提供/東急モールズデベロップメント)
公園内には、サッカー場やテニスコートもあり、今後、スポーツブランドとのイベントなどにも活用していく
公園内には、サッカー場やテニスコートもあり、今後、スポーツブランドとのイベントなどにも活用していく

 アウトドア体験には、滞在時間を延ばす効果もある。同施設の滞在時間は開業当初は平均2時間40分で、現在は少し落ち着いたが、それでも2時間を超える。「通常の商業施設では1時間を超えると長いほうとされる。滞在時間の長さは、居心地の良さを意味する。結果として購買が増え、リピートにもつながる」(青木氏)。

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