人気アウトドアブランドが新市場をどのように開拓しているかを追う本特集。「ザ・ノース・フェイス」のマタニティーウエアが好調な背景には、「マタニティーウエアにお金を出さない」という常識を疑い、ブランドの根幹的価値である高機能を生かしたものづくりがあった。

ザ・ノース・フェイスは2019年からマタニティーウエアに参入
ザ・ノース・フェイスは2019年からマタニティーウエアに参入

 アウトドアのブームが定着し、人気アウトドアブランドのアイテムが日常のシーンに浸透している。そんな中、本特集「アウトドアブームが生む新市場」では、人気アウトドアブランドがどのようにして日常の新市場を開拓しているか、さらには非アウトドア企業がアウトドアの要素をいかに取り込んで新たな価値の提供しようとしているかを追う。第1回は「ザ・ノース・フェイス」(以下、ノース)だ。

 ノースといえば、アウトドアブランドでありながら、街中でもそのロゴを見ない日はないほど人気となっているブランド。最近では当たり前となっている、アウトドアと日常のシームレス化をけん引してきた先駆者といえるだろう(詳しくは特集「ザ・ノース・フェイス 強さの秘密」を参照)。

 そんな中、ノースのマタニティーウエアが好調だという。2019年10月に発売し、同月末には欠品が相次いだほど。そもそも、なぜアウトドアブランドがマタニティーウエアに進出したのだろうか。

女性市場開拓の一環としてスタート

 ノース=男性向けというイメージがあるなか、実は同ブランドは6年ほど前から「ウィメンズプロジェクト」という女性市場開拓プロジェクトを立ち上げ、女性向け商品を強化してきた。「女性向けは山ガールブームなどでアウトドア用としては浸透してきたが、男性向けほど日常で使われていなかった」(ノースのマタニティーウエアを担当する、ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業一部 キッズグループの矢野真知子氏)

 そんな中、19年にはブランド全体として女性を前面に出し、女性アスリートやスタイリスト、女優を起用した大規模キャンペーンを展開。そのなかで、同ブランドが得意とする高機能性を生かせるカテゴリーとしてマタニティーウエアの展開もスタートした。

ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業一部 キッズグループの矢野真知子氏
ゴールドウイン ザ・ノース・フェイス事業一部 キッズグループの矢野真知子氏

 参入に当たって大きなハードルとなったのが、多くの人がマタニティーウエアにお金をかけないことだった。マタニティーウエアには通販企業や子供・ベビー用品チェーン、ファストファッションなどさまざまな企業が参入しているが、妊娠時という短期間しか着られないことから低価格のニーズが高く、手ごろな価格の商品が多い。高機能を売りにする同ブランドとは相いれない市場とも思える。社内では「1万円以上は出してもらえないのでは」という声もあったという。

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