日本に抹茶が逆輸入される――。米ワールドマッチャは抹茶専用の抽出機器「Cuzen Matcha(空禅抹茶)」の日本での販売を2021年7月21日に開始。同社はCuzen Matchaの開発により、コーヒーに代わる飲料として米国で「MATCHA」ブームを引き起こしている。抹茶における日米でのパーセプションギャップがイノベーションの源泉だ。
今回はパーセプションを「いかす」方法を考えるうえで、イノベーションとパーセプションの関係について考えてみたい。製品・サービスをパーセプションの観点から眺めると、その革新性の源が見えてくる場合がある。
20年1月、ラスベガスで開催された世界最大級の家電・技術見本市「CES」の会場で、ある日本人が代表を務めるスタートアップ企業が出展した機器が注目を集めた。その名もCuzen Matcha。同機器は、エスプレッソマシンのような「MATCHAマシン」と専用の茶葉を組み合わせたもの。茶葉を機械にセットし、水を注いでスイッチを入れるだけで濃厚な抹茶を手軽にいれられる。
抹茶の新しい飲用体験を提供するCuzen Matchaは、デザインや機能性が優れた製品に与えられる「CES 2020 Innovation Awards Honoree(イノベーション賞)」を受賞。20年8~9月に米クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で企画を実施し、目標額の2倍超の11万7761ドルを集めた。この資金を基に同10月に全米で発売。11月には米ニュース誌「TIME」の「Best Inventions of 2020」に選出された。
Cuzen Matchaを開発したのは、米サンフランシスコに拠点を構えるワールドマッチャの塚田英次郎氏だ。塚田氏はサントリーに入社後、日米両国で新商品開発や事業開発に従事し、「DAKARA」「Gokuri」「伊右衛門特茶」など数々のヒット商品を手掛けてきた。その傍ら米国でお茶事業の一環として、18年にサンフランシスコで抹茶カフェ「Stonemill Matcha」を手掛けた。米国人にとって抹茶はなじみがなかったものの、抹茶ラテやスパークリング抹茶といったメニューの提案で、一躍人気店となった。
Stonemill Matchaの成功で、米国での抹茶が持つ可能性を確信した塚田氏はサントリーを退社。19年に米国でワールドマッチャを創業した。
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