本連載では今回から、パーセプションを「いかす」方法を解説する。1つは企業内の社員エンゲージメントの向上を目指した、インターナルコミュニケーション(社内広報)への応用が考えられる。大手IT企業NTTデータの取り組みはその好例だ。同社は2017年度から社内変革を目指した取り組みを進めたが、思うような成果を上げられずにいた。停滞状況の打破としてパーセプションを活用した。

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 NTTデータは、日本を代表するシステムインテグレーターであると同時に、国内外に300社を超える傘下企業を持つ世界最大級のIT企業だ。NTTデータ本体だけでも約1万人、グループ会社も含めると13万人以上の社員が在籍している。そんなNTTデータは国内で大きく3つの事業領域を持っている。「公共・社会基盤」「金融」「法人・ソリューション」だ。このうち、法人・ソリューションに関わる社員およそ3000人のエンゲージメント向上に、パーセプションを活用している。

 これだけ多くの社員の顔を企業の求める方向に向かせ、まとめ上げるのは至難の業だ。同組織では、2017年から社員のエンゲージメント向上のためのさまざまな施策を打ってきたが、法人・ソリューション事業推進部コミュニケーションデザイン推進室部長の土佐知志氏によると、最初の3年間(17~19年)は、思ったような成果が出なかったそうだ。

パーセプションの活用をテーマにした本連載。今回からはパーセプションを「いかす」ための具体例を紹介していく
パーセプションの活用をテーマにした本連載。今回からはパーセプションを「いかす」ための具体例を紹介していく
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 特に課題視したのは、中長期的な企業変革のビジョンの理解だ。同社は10年後に目指す全社統一ビジョンとして「Trusted Global Innovator(信頼されるグローバルイノベーター)」を掲げる。それを受けた法人・ソリューションのビジョンが「Trusted Digital Partner」(信頼されるデジタルパートナー)だ。このビジョンの下、「お客様の変革領域に注力し、事業成長に貢献する」「業務と先進テクノロジーの専門性を掛け合わせることで、高い付加価値を提供する」「業務・先進テクノロジーのプロフェッショナルを目指し、お客様をリードするマインド・文化を醸成する」ことを目指すとしている。

 17年当時、同組織が認識していた人事的な課題として離職者の増加、人材の獲得、労働時間と健康・安全、働き方改革を抱えており、そうした課題の解決を図り、エンゲージメントを向上させることが、中長期ビジョンの理解には不可欠であると捉えていた。

 そのための具体策として、労働時間の削減、テレワークの拡大、ビジネスカジュアルの推進やサテライトオフィスの利用、社員の健康状態を把握するパルスサーベイの導入、「LINE WORKS」や「Microsoft Teams」などのオンラインコミュニケーションツールの導入、ミドルマネジャー向け研修などの施策を打つ。

 また、社員の会社に対する満足度を把握するためサーベイ(ES調査)を行い、エンゲージメントスコアを算出してモニタリングした。17年度の初回調査時のエンゲージメントスコアは55.3。総合満足度である会社満足度は3.6、仕事満足度3.4、上司満足度3.4、職場満足度3.3という結果が出た。

 ちなみに、エンゲージメントスコアの他社平均は50.0。同様に他社の平均は、会社満足度3.3、仕事満足度3.4、上司満足度3.4、職場満足度3.4だという。エンゲージメントスコアの調査は17年度を含めて計3回行い、これを満足度向上策の効果を測る指標とした。

スコア向上が目的になると失敗する

 3年間の取り組みの結果、一部組織においてはスコアの向上が見られた。また、社内向けサイトで公開した社内報が「社内報アワード2020」コンクール(ウィズワークス主催)の「Web/アプリ社内報部門」でグランプリを獲得するなど、社外での高い評価につながる取り組みもできた。しかし、組織全体のエンゲージメントスコアという観点からみると、目に見える変化を起こすことができなかったそうだ。17年度は55.3、18年度は55.3、19年度は54.2と、総合満足度の数値はほぼ横ばいだ。

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