今回はいよいよパーセプションを「はかる」の最後の回となる。日本企業においてパーセプションを「かえる」「つくる」事例は多く見られるが、「はかる」まで視野に入れた企業はまだ少ない。今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の下、パーセプション計測に取り組み始めたポーラの事例を紹介する。

ポーラはパーセプションを軸にした改善でCX(顧客体験)の向上を目指す
ポーラはパーセプションを軸にした改善でCX(顧客体験)の向上を目指す

 パーセプションを体系的に計測し、把握してモニタリングする日本企業はまだまだ少ない状況だが、中にはパーセプションの計測をしっかりと企業・ブランドの管理下に組み込もうと、先駆的な取り組みを行っている企業もある。化粧品の製造・販売を行うポーラだ。

 ポーラは1929年創業。戦後、化粧品の訪問販売で飛躍的に事業を伸ばした。近年は訪問販売だけでなく、百貨店の化粧品コーナーのほか、エステティックサロンを併設した店舗「ポーラ ザ ビューティー」を展開するなど、店頭販売にも力を入れている。また、オンラインでの通信販売、ホテルや旅館などのアメニティーを提供するB2B(企業向け)事業にも業態を広げている。

 ポーラがパーセプション計測に取り組む背景には、多くの日本企業にとって課題となっているDXを推進し、事業横断でCX(顧客体験)を高めていく企業改革がある。その事業とは、「ポーラショップ」「百貨店」「ECサイト」の3つ。これらの販売チャネルを横断してCXを向上し続けるために、しっかりと顧客の声、すなわちパーセプションをすくい上げ、マーケティングプロセス全体を評価しながら、事業活動を改善する仕組みをつくり上げようという意図がある。

訪問販売はパーソナライズの先駆け

 実はポーラには顧客を“個客”と捉え、それぞれの意見やパーセプションを大事にしようという気風、顧客基点という視点が、もともと会社のDNAとして備わっている。その素地となっているのが、「最上のものを一人ひとりに合ったお手入れとともに直接お手渡ししたい」という創業者の思いだ。主力の訪問販売事業は、それを分かりやすく体現している。「ビューティーディレクター」と呼ばれる、顧客一人ひとりに向き合う美容のスペシャリストを全国に配置し、訪問販売を通じて顧客ごとに適した商品を届けてきた。昨今、マーケティングで重要性を増している「パーソナライズ」されたCXの先駆けなのだ。

 ただ、先述した通り、消費者の購買プロセスは複雑化している。意識せずともさまざまなチャネルで商品と接触し、そのときの状況に適した売り場で購入する。ポーラもそうした購買プロセスに対応すべく、OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略の推進を急ぐ。チャネル横断のCX向上にはパーセプションを把握する仕組みが必要だと考え、新たな取り組みを始めた。

 ポーラがパーセプションをベースとしたプロセス評価を導入し始めたのは2018年のこと。それ以前はパーセプションの定常的な把握はせず、施策ごとの評価、定点観測としてのイメージ調査や顧客満足度調査にとどまっていた。また、各事業施策の計測データは体系化されていなかったため、各施策で得られたデータを他事業や次の施策に生かしきれていなかった。そこに課題意識を感じていた。

 この課題を解決する上で導入したのがクー・マーケティング・カンパニー(東京・渋谷)代表取締役の音部大輔氏が考案した「パーセプションフロー・モデル」だ。パーセプションフロー・モデルは消費者の購買プロセスに合わせて、想定するパーセプションの変化、変化を起こすための施策の効果を把握し、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回せるようにするフレームワーク。全社的に同じフレームワークを活用することで、他部門の施策データを参考しやすくなる。

 パーセプションフロー・モデルの作成に当たり、ポーラは顧客接点をプロセスとして可視化するところから始めた。例えば、店舗、カウンセリング、エステ体験、店舗からのアフターフォローやDM、ECサイトでの購買などの接点、そしてパーセプションとなり得る要素と顧客の感情の洗い出しだ。それを基にパーセプションフロー・モデルの仮説を立てた。各販売チャネルのマーケティング担当者や販売スタッフとのワークショップで仮説をブラッシュアップし、顧客アンケートによる定量調査で検証した。

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