日経クロストレンドは2020年10月7日、「パーセプションチェンジ(認識変容)」をテーマにした学習セミナー「日経クロストレンド・カレッジ」を開催した。講師はPR専門家の本田哲也氏だ。講演後はさまざまな質問が寄せられ、時間の都合上回答しきれないほどだった。そこで聴講者から寄せられた質問について、本田氏が回答する。

本田事務所 代表取締役/PRストラテジストの本田哲也氏
本田事務所 代表取締役/PRストラテジストの本田哲也氏

過去の連載ではジンとカレー、ワールドとD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)、ビールとファインダイニングなどの組み合わせが事例として紹介されていました。パーセプションチェンジを起こすために「何と組み合わせるか」を見つけるうえで、意識したり工夫したりするポイントはありますか。

連載ではパーセプションを形成する5つの要素を紹介しています。このうち、「コントラスト」と「グループ」を意識するとよいでしょう。コントラストが強いほど、相対的に対象商品やサービスのパーセプションがよく見えます。ジントニックとカレーの事例では、意外な組み合わせの2つをグループにすることでパーセプションが変わりました。

パーセプションは(1)事象、(2)リテラシー、(3)グループ、(4)タイミング、(5)コントラストの5つの要素の組み合わせで形成される
パーセプションは(1)事象、(2)リテラシー、(3)グループ、(4)タイミング、(5)コントラストの5つの要素の組み合わせで形成される

 PR的な観点でいえば、想像の範囲内のものを並べてもメディアに取り上げてもらえず、話題喚起が起きづらい。消費者の頭の中で別々の引き出しに入っているものが、意外と一緒であると認識してもらうことが重要です。パーセプションは事実に立脚するものですが、事実に立脚しながら意外なことというのは世の中には多数あります。

 また、後から事実をつくることもあります。意外性は重要ですが、ファクトがない嘘はダメです。発想としては先に意外性のある組み合わせを見つけ、後から実験したり調査したりしてファクトを生み出すことで、実現につながることもあります。洋酒メーカーのバカルディ ジャパン(東京・渋谷)はジントニックと意外な組み合わせの料理を見つけるうえで、人間の味覚をAI(人工知能)で再現した味覚センサーを使い、データでファクトをつくりました。

ビヘイビアチェンジが指す意味について、もう少し詳しく教えてください。

ビヘイビアとは日本語に訳すと行動。よって、ビヘイビアチェンジは行動変容と訳されます。マーケティング上では買ってなかったものを買うようになるとか、行ってなかった場所に行くといったアクションを起こさせることを指します。パーセプションチェンジの目的は、ビヘイビアチェンジにつなげることです。

 ビヘイビアという言葉には「習慣」というニュアンスも入っています。ビヘイビアが変わるということは、継続的に行動が変わること。ですので、話題になっているのでとりあえず買ってみるという行動喚起ではなく、毎朝飲むようになるような習慣付けを意味します。ビヘイビアが変わると、企業にとって大きなマーケティングの成果につながります。

 ですが、行動の変化は人のパーセプションに根差しています。自分に関係ないと思っていたブランドが、マーケティングによって身近なブランドへとパーセプションが変わった。そのときに購買などの行動に移るからです。ビヘイビアチェンジを起こすには、前段階としてパーセプションチェンジが重要になるというわけです。

「パーセプション」と「イメージ」の違いはファクト

「パーセプション」と「イメージ」の違いを言語化するのが難しく、いつも社内などで上手に説明できません。これらの違いをどのように説明すべきでしょうか。

はっきりとここが違うという解説は、世界で見ても論文などがあるわけではありません。私の見立てにはなりますが、パーセプションというのはファクトに立脚するものです。何もないところからは生まれません。

 一方、イメージは根拠がなくても生まれます。なんとなく怖そうとか面白そうというイメージを持つことがあります。食わず嫌いはその典型例でしょう。ファクトに基づくのがパーセプション、根拠のない印象をイメージと捉えると良いでしょう。

パーセプションの「完全変容」か「拡張」のどちらを目指すのか、どちらが効果的なのかを判断すべきポイントを教えてください。

完全変容は今あるパーセプションを捨て去り、まったく新しいパーセプションを獲得するもの。拡張は現在あるパーセプションを残しながら、新しいパーセプションを獲得して顧客層を広げる手法ですね。どちらを目指すかの判断はとても重要です。その判断軸は商品やブランドが抱える現状のパーセプションによります。

 あるアイスクリームブランドは、「若年層のみをターゲットにすべきだ」というマーケティング戦略をとることにしました。ですが、現状のパーセプション調査をしたところ、若年層の認知度は90%を超えているものの、「昔、お父さんが食べていた、昭和時代のブランド」というパーセプションでした。自分ごと化されていないため、購買に至っていない。そこで、マーケティング戦略において昔から買ってくれているものの、既に年配になっている層は対象として切り捨てるべきだと判断しました。

 この例からも分かるように、現時点でブランドが得ているパーセプションがマーケティングの足かせになっており、既存の顧客を多少捨ててでも、新しいブランドをつくると判断したときには完全変容を目指すべきでしょう。ロングセラーブランドなど、長い歴史がある商品が対象になることが多いです。パーセプションが変わらず、時代に取り残された結果、大掛かりなてこ入れが必要になる場合に完全変容を目指すことになる。多くの場合はそれほど大胆な転換を図らないため、事例としては少ないです。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>