本連載ではパーセプションを「かえる=パーセプションチェンジ」「つくる=パーセプションによる新市場の創出」上で重要なポイントを、さまざまな事例を通じて解説してきた。今回は「はかる」をテーマに、花王などの事例を用いながら3つの方法を解説する。

(写真/Shutterstock)
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 マーケティングや広報活動におけるパーセプションの貢献度を正しく測ることは、簡単なことではない。なぜならば、次の2つの点が計測を難しくしているからだ。

 1つは、パーセプションとは受け手、つまり世の中の認識だからだ。企業にとってのパーセプションとは、生活者が商品やブランドをどのように認識しているかを指す。あくまでも相手側からの認識なので、把握する手段が限られる。もう1つは、パーセプションは、生き物のように限りなく変化するからだ。例えば、認知度は多くの場合、広告を大きく打てば上がるし、投下量が減れば下がる。比較的、把握しやすい指標だといえよう。一方、パーセプションは内容も含めて複雑に変化する。それを時系列でしっかりと把握することが重要になる。

今回からはパーセプションを「はかる」手法を解説する
今回からはパーセプションを「はかる」手法を解説する

パーセプションはなぜ測定する必要があるか

 具体的なパーセプションの測り方の手段を説明する前に、KPI(重要業績評価指標)という観点から、まずはパーセプションを含むPRの全体像を俯瞰(ふかん)してみよう。ここで復習しておきたいのが、この連載でも以前に登場した「PRのピラミッド」だ。

 PRのピラミッドとは、情報が世の中に出る下段の「パブリシティー」、世の中に出た情報によって認識が変わる中段の「パーセプションチェンジ」、行動変容を表す上段の「ビヘイビアチェンジ」というふうに、認識の形成から行動へと移り変わらせるためのPRの流れを図式化したものだ。この全体をどういうふうに測定するのかを整理したのが下図となる。

PRのピラミッドの段階に合わせて、一般的に測定するKPI(重要業績評価指標)を図式化した。中段のパーセプションチェンジでは3つの方法で調査する
PRのピラミッドの段階に合わせて、一般的に測定するKPI(重要業績評価指標)を図式化した。中段のパーセプションチェンジでは3つの方法で調査する

 下段のパブリシティーの測定は、定量評価と定性評価で行う。定量では、例えば露出数(記事の掲載数など)や、どれくらいの人々にリーチしたかという到達人数、そして最近はあまり重要視されなくなったが、PRにおいては、メディアへの掲載を広告に換算した広告費換算などのことを指す。つまるところ、どれだけ世の中にその情報が出たのか、どのくらいの人に届いたのかを計測することになる。定性評価はそのメディア掲載が、狙った内容で出たかどうかを見る。「メッセージ反映度」とも呼ばれ、新聞や雑誌の記事、テレビ番組での紹介で伝えたいメッセージがどの程度反映されているのかを評価する。

 次に本連載のテーマであるパーセプションチェンジの計測は認識、認識変容の把握が目的となる。計測方法は大まかに次の3つある。(1)生活者のパーセプション調査(2)メディアヒアリング(3)SNS調査だ。これはメディアで露出された結果、本当に生活者の認識が変わったのかどうか、そして狙った通りに変わったかどうかを把握することを目指す。分かりやすい数字的な指標がないため、パブリシティーと比較して完全に把握することは難しい。具体的な計測方法は本記事の後半で解説する。

 上段のビヘイビアチェンジは、行動の有無を計測する。これははっきりと把握しやすい。一般的な企業なら売り上げ、集客数、購買意向や購買理由のアンケートデータなどを取得していることが多く、またデータの取得方法も既に確立されている。購買意向だけでなく、なぜ欲しいか、あるいは欲しくないのかなど、より消費者心理を深堀りしたデータを取る手段は多数ある。

 問題はパブリシティーによって、真ん中のパーセプションチェンジがビヘイビアチェンジへとスムーズにバトンを受け渡し、狙った通りに行動変容に貢献したかどうかの測定だ。ここを測定しないと、メディア露出量が増えたことと、商品が売れたり、ブランドの支持者が増えたりしたことの相関関係が分からなくなる。それが、コミュニケーション全体像の中でのパーセプション測定の意義だ。

 認知、認識、行動の変容は、下から上、上から下へと循環するものなので、理想的には数カ月に1回、1年に1回というふうに定点的に観測していくべきだろう。時間軸により変化が可視化されるので、うまく循環しているかどうかが把握できるというわけだ。

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