パーセプションチェンジ(認識変容)とは、その対象に対しての既存のパーセプション(認識)が、何らかの状況変化や仕掛けによって「かわる」ことだ。今回はこれまでのまとめとして、パーセプションチェンジの戦略を考える上で、重要になる4つのポイントを解説する。
本連載の第5回でも少し触れたが、パーセプションは社会を包む「空気」と密接な関係にある。ブランドや商品のパーセプションを自分たちが望むように変化させたいのであれば、世の中の「空気の変化」をよく読み、中長期的な視点でプロジェクトを策定し、遂行していく必要がある。コロナ禍によるパーセプションチェンジは、誰かが物事の認識を意識的に変えたというよりは、避けようがない社会タイミングで変わった特別な例と捉えるべきだろう。
さてここから、パーセプションチェンジを引き起こすプロジェクトを策定する際に重要になるポイントを取り上げる。具体的には、
- ①「ビフォー」と「アフター」
- ②「主観」と「客観」
- ③「カテゴリー」と「プロダクト」
- ④「完全変容」と「拡張」
の4つとなる。
まず、「『ビフォー』と『アフター』」だ。当然ながら、パーセプションチェンジには前後が明確に存在する。もしパーセプションチェンジを仕掛けたいのなら、対象商品やブランドの現在のパーセプションをかなり明確に言語化しなければならない。そして、既存のパーセプションをどう変えるかという、変容後のあるべき姿も、同様のレベルで明確に言語化しなければ、プロジェクトの成功は望めないだろう。
私の経験上でも、パーセプションチェンジが必要とまでは分かっていても、プロジェクトの中で前後のパーセプションが明確に言語化できていないケースは少なくなかった。例えば、本連載で事例として取り上げたメルカリの場合は以下のような具合だ(関連記事「ゴーン、メルカリ、森永ラムネ 3者に共通するパーセプション」)。
上図のメルカリのように、ビフォーとアフターを明確化するということは大事なポイントの1つだ。
ただし、言語化する上で2つ目のポイントである「『主観』と『客観』」を意識しなければならない。PRが苦手な日本企業に多い例として、パーセプションを変えるべきであるという割には、自らを客観視できていないケースが散見される。
またパーセプションを変えることを、イメージを変えることと勘違いしていることも多い。企業にパーセプションチェンジの狙いを聞くと、「よりカッコよくしよう」「もっと優しいイメージにしよう」と言われることがある。それ自体は間違いではない。しかし、これでは主観に寄り過ぎてパーセプションの本質を理解できていない。
そもそもパーセプションとは一般的に、相手あるいは周囲が、あなたをどう見ているのか、という客観的かつ具体的な認識のことだ。まずすべきは、前述した通りビフォー、つまり自分たちは現在どのように見られているかを認識することだ。その上で、「私たちはこう見られるべきだという客観的なパーセプションを設定することが重要だ。
「カテゴリー」か「プロダクト」か、対象を明確化
続いて、3つ目のポイント「『カテゴリー』と『プロダクト』」について解説しよう。これは、高いマーケティング効果が見込めるパーセプションチェンジの対象を明確化することだ。例えば、アクションカメラ「GoPro」はプロダクトのパーセプションチェンジを狙った例。GoProは「エクストリームスポーツ向けカメラ」から、「インスタ映えする写真や動画が撮れるカメラ」へと、プロダクト自体のパーセプションチェンジを狙って顧客層の拡大に成功した(関連記事「GoProヒットにパーセプションチェンジ 日本で女性に売れたワケ」)。
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