マーケティングや広報活動における「パーセプション(認識)」のコントロールは、世の中から向けられる認識を新しく作り出したり、変化させることだ。しかし、パーセプションは制御できない結果論でもある。どう見られているかという認識は、複数の要素に起因する。その要素を「転校生」を例に5つに分解して解説する。

パーセプションの形成に関わる5つの要素を「転校生」を例に解説する(写真:Shutterstock)
パーセプションの形成に関わる5つの要素を「転校生」を例に解説する(写真:Shutterstock)

 あなたは転校の経験はあるだろうか。転校初日は、クラスメートの前で自己紹介をすることになるだろう。これで「認知」される。その時点で、パーセプションは生まれていない。情報が足りないからだ。その後に得る情報によって、クラスメートそれぞれが転校生に対する「パーセプション(認識)」を持ち始める。

 マーケターであれば、自社製品やサービスに対するパーセプションを正しくコントロールしたいと考えるだろう。それには、どのような要素で形成されるのかをまず理解する必要がある。それは5つの要素に分類できる。「事象」「リテラシー」「グループ」「タイミング」「コントラスト」だ。転校生に例えて、詳しく解説していこう。

 「前の学校でけんかをして、停学処分になったことがあるらしい」。もし、こうした話がクラス中に広がったとすれば、その転校生はたちまち「けんか早い人」「怖い人」というパーセプションを持たれ始める。これが1つ目の要素である「事象」だ。

 すべてのパーセプションには、それに至る事象や事実が介在する。火のないところに煙は立たないというわけだ。さらに言えば、イメージ(印象)との大きな違いでもある。転校生に対して怖そうという印象を抱くのは、あくまでイメージであってパーセプションではない。パーセプションを持ったり持たせたりするには、その真偽はともかくとして、何らかのファクトを伴う具体的な事象が必要となる。

 かつてハイボールブームを巻き起こしたサントリーホールディングスは、若者がハイボールで乾杯する酒場を意図的に都内に出現させた。この事象をメディアが取材することで、「衰退していたウイスキーが、ハイボールで若者に人気になっている」というパーセプションが世の中に広まるきっかけとなったのだ。

 パーセプションは、実はクラスメートが育ってきた社会や家庭環境にも左右される。転校生の言動を観察して、日本人のクラスメートの大半が「かなり乱暴な人」という認識を持ったとしよう。ただ、治安の悪い街で育った経験を持つ生徒から見れば「たいしたことない」と認識するかもしれない。転校生のやっていることは一緒でも、それを見ている人の経験や価値観によって異なるパーセプションが生まれる。これが、2つ目の要素である「リテラシー」だ。

 リテラシーは読み書き能力から転じて、現代では与えられた材料から必要な情報を引き出し活用する能力という意味で使われる。そして、物事を認識するリテラシーは、当事者が育った社会環境や文化的背景によって異なってくる。たとえ同じ事象でも、受け手のリテラシーによって期待値や納得感が変わるのだ。

スウェーデンの生協が最高売り上げを達成したワケ

 スウェーデンの生協は数年前、動画マーケティングの成功によって過去20年間で最高の売り上げを達成した。その動画の内容は、オーガニック食品をある家族に2週間食べ続けてもらう実証ドキュメントだ。子供たちの体から検出されていた化学物質の数値がほぼゼロになるという、驚きの結果が示された。

 他国ではオーガニック食品に対して「健康に良い」というパーセプションが形成されていたが、スウェーデンでは「環境に良い半面、価格が高い」という認識が強かった。動画はそのパーセプションの変化を狙った。このように、国や文化の違いによるリテラシーは、パーセプション形成にも影響をもたらす。

 転校生がクラスメートからどう見られるかは、一緒に行動する相手も影響する。校内で悪名高い不良グループと一緒に行動すれば「不良」、注目のおしゃれグループであれば「おしゃれ」というふうに、クラスメートのパーセプションは分かれるだろう。所属するグループに対するパーセプションは、個人のパーセプションにも影響を与える。これが3つ目の要素である「グループ」だ。

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