マーケティング業界で「認識(パーセプション)」という言葉が話題に上がることが増えた。消費者の商品やブランドに対する認識を指す。このパーセプションを変えることで、マーケティング課題を一気に変えられる可能性がある。本連載ではパーセプションチェンジを起こすうえで必要な考え方スキルについて、PRストラテジストの本田哲也が解説する。

日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告は、日本の司法制度に対するネガティブな認識を世界に広めることを狙っていると、著者はみている(写真:AFP/アフロ)
日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告は、日本の司法制度に対するネガティブな認識を世界に広めることを狙っていると、著者はみている(写真:AFP/アフロ)

 従来、マーケティングや広報活動で最も重視されていたのは「認知(アウェアネス)」だ。だが、実際は認知向上だけを追い求めていたわけではないはず。多くのマーケターや広報担当者は認知の獲得と併せて、どう消費者の意識を変えるか、ブランドや商品に好意的なイメージを持ってもらうか、を考えていただろう。それは、パーセプションと呼ばれる消費者視点での商品やブランドの見られ方の変化を指す。

 モノが溢れコモディティー(汎用)化が進む昨今は、認知を獲得するだけでは消費者の心は動かせない。そこで、認知を上げる活動に加えて重要になっているのが、世の中から向けられる認識、つまり「パーセプション」の正しいコントロールスキルだ。パーセプションを正しく理解することで、マーケティング課題の突破口が見つかる可能性がある。

 「商品の認知は⾼い。けれども売り上げが低迷している」。商品やサービスの品質が落ちているわけでもない。認知率は⾼いため、広告やプロモーションの投下量の問題でもない。多くの企業が抱える悩みだろう。ロングセラーブランドで特に顕著だ。こうした悩みの根源は何なのか。筆者は、こうした相談を数多く受ける「PRの専⾨家」という⽴場にある。そして 実のところ、そのほとんどは例外なくパーセプションの問題だ。

 さて、そもそも、パーセプションとは何か。⼤辞林には次のように記されている。

パーセプション【perception】 知覚、理解、認識

 辞書的はこのような意味だが、もう少し平たく言えば、モノゴトの見え方や捉え方という感じだろう。物理的なモノや事象は、それ自体は存在するもの。しかし、その「見え方」となってくると話は違う。見え方や捉え方というものは、人によって違うことが多く、時代によっても移り変わる。

 トレンドの発生や移り変わり、そして衰退の裏には、常にパーセプションの変化が潜んでいる。だとするならば、パーセプションをコントロールすることで、トレンドを生み出すこともできるはずだ。情報が溢れ、ネットで検索すらしない生活者が増えている。興味対象外の情報はむしろ排除される傾向にある。

 この時代における情報発信は、もはや認知を争う戦いではない。認識の戦いなのだ。世の中のトレンドの裏側で、消費者のパーセプションの変容はなぜ起こるのか。企業は、商品やブランドにとって好ましいパーセプションをどう維持すべきなのかを考えるべきだろう。

 もう1つ重要なことは、パーセプションの発想は経営からマーケティングまで、広くさまざまな仕事に関係するということだ。新商品の市場投下を成功させたい、歴史あるブランドを活性化させたい、企業広報で会社に新しいイメージをつけたい、スタートアップ企業の経営を成功させたい。そのすべてに、パーセプションは関係してくる。

 なぜなら、世の中のあらゆる事象が、パーセプションによって引き起こされているからだ。その意外な例がカルロス・ゴーン被告だ。

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