最後に問うた「How Will You Measure Your Life?」

 訃報がニュースサイトを巡り、世界中のビジネスパーソンやマーケターが驚きと悲しみに沈んだ日、10年来の友人から「いまからこれを読む」と『How Will You Measure Your Life?』(『イノベーション・オブ・ライフ ハーバードビジネススクールを巣立つ君たちへ』)という一冊を紹介されました。イノベーションについての論考というより、キャリアや人生についてのアドバイスや示唆があふれている本書には、冒頭に3つの質問が出てきます。

●どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう?

●どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を、ゆるぎない幸せのよりどころにできるだろう?

●どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?

 これらの質問はいずれも「自分の人生を評価するものさしは何か?」という、原題にもなったとても大事な問いにつながっていきます。この問いに答えることは、充実した人生のヒントに直結するのかもしれません。本編でさまざまに議論され、終講で収束していきます。

 その議論のなかに、理論と実践についての重要な一文がありました。

 「人生には経験をとおして学ぶことが許されない状況が多々ある。(中略)そんなとき、理論がとても役にたつ。何かを経験する前に、これから起きることを説明してくれるのだから」

 実践者でありつつ学究者であったクリステンセン教授らしい一文であると思いました。理論の理解を怠ることなく、また理論を妄信して適用を間違えないように、プロフェッショナルとしてのありようを問われているように感じます。人類と地球の未来に貢献するイノベーションを続けていくための、偉大な精神と智恵が残されました。先生のご冥福をこころよりお祈りいたします。

『イノベーション・オブ・ライフ ハーバードビジネススクールを巣立つ君たちへ』(クレイトン・M・クリステンセン、ジェームズ・アルワース+カレン・ディロン著、櫻井祐子訳/翔泳社、1980円)
『イノベーション・オブ・ライフ ハーバードビジネススクールを巣立つ君たちへ』(クレイトン・M・クリステンセン、ジェームズ・アルワース+カレン・ディロン著、櫻井祐子訳/翔泳社、1980円)