ここまでダイナミックプライシングを導入・実験する企業の取り組みを見てきた。一方の消費者側は、この価格決定メカニズムをどこまで知っているのか。またメリットを感じているのかいないのか。日経クロストレンドは全国20~50代の男女434人にアンケートを実施した。
ダイナミックプライシングは、スタジアムや劇場・ホールの客席、鉄道・航空の指定席、ホテルの客室など、主に空席を埋めるタイプのビジネスで重宝され、販売期間内にできる限り売り切り、かつ売り上げを最大化することを目指す価格決定システムだ。これがうまく機能するためには、消費者側の理解と賛同を得る必要がある。果たして得られているのだろうか?
そこで日経クロストレンドは、ジャストシステムの「Fastask(ファストアスク)」が保有する調査モニターを対象にアンケートを実施し、ダイナミックプライシングの認知度や、ケース別のダイナミックプライシング導入に対する許容度などを尋ねた。調査対象は全国20~50代の男女434人。
まず、ダイナミックプライシングの認知度について。「例えばスポーツ観戦のチケットなどで、売れ行きの良い人気の試合・席は値上げされ、売れ行きがイマイチな試合・席は値下げされるという具合に、チケット販売期間中に価格が変動するシステム『ダイナミックプライシング』をご存じですか? ※同じ席でも昨日より今日のほうが高くなっていたり安くなっていたりする変動価格制が特徴です」という設問を立てて聞いた。
最も多かったのは「初耳だ」(50.2%)で半数を超え、「知っている」「名前は聞いたことがある」「名前は知らないがそのような価格設定があることは聞いたことがある」がそれぞれ15~17%台でほぼ横並びだった。なんとなく知っている人まで含めれば、認知率はざっと半数。男女別では女性の「初耳だ」が58.3%と高く、年代別では20代の「知っている」が27.4%と、30~50代と比べて突出して高かった。いずれにしてもまだ注釈なしで一般読者向け記事に用いるのは厳しそうだ。
続いて、ダイナミックプライシングを許容できるかどうか。これは適用される内容によって回答が変わり得るため、コンサートチケットの場合、駐車場料金の場合など、具体的に提示して許容度を聞いた。選択肢は、「許容できる」「どちらかと言えば許容できる」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば許容できない」「許容できない」の5択。
「許容できる」と「どちらかと言えば許容できる」を足した“許容派”が最も多かったのはホテルの室料で43.6%。以下、航空運賃(41.7%)、プロ野球やサッカーのチケット(41.0%)、コンサートのチケット(39.7%)と続く。既にダイナミックプライシングを導入済み、あるいは導入進行中のジャンルでは容認が比較的多い。
反対に「許容できない」と「どちらかと言えば許容できない」を足した“否定派”が最も多く出たのは、「雨が降ると傘の値段が高く、晴れているときは安くなる」という仮のシチュエーションに対してで、43.3%に上った。以下、「タクシーの料金が、混雑時には高く、空いているときは安くなる」(41.1%)、「飲食店で混雑時は値段が高く、店内がガラガラのときは安くなる」(38.3%)、「一時利用の駐車場料金が、混雑時には高く、空いているときは安くなる」(37.4%)、「高速道路の料金が、混雑時には高く、空いているときは安くなる」(35.5%)の順だった。
実例としてまだ存在していなかったり、実証実験段階だったりとダイナミックプライシング適用に至っていないケースについては、違和感を持つためか否定的な反応が強い。特に傘やタクシーといった、にわか雨に遭遇して困ったときに利用するような商品・サービスの価格をつり上げられると、値上げによって確保しやすくなっているのだとしても、そのありがたみより足元を見られている不快感のほうが上回ってしまうようだ。
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