ダイナミックプライシング特集の2回目は、前回に続き名古屋グランパス。Jリーグ所属のクラブの先陣を切って、2019年シーズンからホーム開催の全20試合に変動価格制を導入した。すると、当初想定していた入場料と観客動員数の最大化以外の効果も見えてきたという。それは何か?
前回紹介したように、名古屋グランパスがダイナミックプライシングを導入した主な目的は、チケットの不正転売の抑制、入場料の適正化によるチケット収入の最大化、観客動員数の最大化だった。だが、実際に導入してみると当初は想定していなかった発見もあったという。
【前回記事】
特集第1回「名古屋グランパスが全面導入 変動価格でチケット代は最大2倍に」
シーズンチケットの販売数が増加
例えば、シーズンチケットへの再評価だ。シーズンチケットとは、ホームゲームの全20試合の席をシーズン前に確保するもの。需要によって価格が変わるダイナミックプライシングが始まったことで、価格変動の影響を受けないシーズンチケットの販売数が伸びたという。
それには、ダイナミックプライシングの導入とほぼ時を同じくして、行けなくなった試合を他の顧客に販売、譲渡するリセールサービスを導入したこともプラスに作用したとクラブは見る。シーズンチケットで人気の試合のチケットの価格高騰に備え、リセールサービスで行けなくなったときのリスクを低減できるのがメリットだ。
また、ダイナミックプライシング導入は、チケット発売後の販売カーブも変化させた。導入以前は、試合開催日が近づくとチケット販売数がぐっと伸びる傾向があったのに対し、導入後は人気の席種ほど初動が良くなった。残席が少なくなって価格が上昇することを警戒してのことだろう。
名古屋グランパスエイトマーケティング部ファンデベロップメントグループグループリーダーの遠藤友貴彦氏によると「2020シーズンからは(シーズンチケット以外の)チケットにもリセールサービスを拡大する。そうすればこの傾向はより顕著になるかもしれない」。ファンにしてみれば、行けるかどうか分からなくてもとりあえず買っておくということがより気軽にできるようになるからだ。
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