東南アジアで爆発的なシェアを誇る配車サービスの「Gojek(ゴジェック)」。彼らが展開するスーパーアプリのビジネス構造の肝はどんなところにあるのか。また、モバイル決済プレーヤーが先行する日本のスーパーアプリ化競争の中で、LINEが仕掛ける別軸の戦い、行政サービスのデジタル化支援が生む商機とは?
「スーパーアプリ」といえば、中国・騰訊控股(テンセント)のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」と、アリババのキャッシュレス決済サービス「支付宝(アリペイ)」が世界の2大巨頭として知られる。だが、世界にはもう1つ、スーパーアプリの一大勢力がある。
それは、主に自家用車を使ったドライバーと乗客をアプリでマッチングする、配車サービスを軸としたものだ。代表格は、東南アジアのデカコーン(企業価値が100億ドル=約11兆円を超える巨大未上場企業)である、シンガポール発のGrab(グラブ)と、インドネシア発のGojek(ゴジェック)。両社は、配車サービスにおける圧倒的なシェアをテコに、フードデリバリーやキャッシュレス決済、買い物代行など、様々なサービスを1つのアプリに統合し、今や東南アジアの人々の暮らしに欠かせない存在となっている。
中でも、ゴジェックのサービス拡充はめざましい。同社は現在、インドネシアでは20種類を超えるサービスを提供している。主力のバイクによる配車サービス「GoRide」、クルマを使った配車サービス「GoCar」をはじめ、バイクによる宅配サービス「GoSend」、飲食店などの料理を届ける「GoFood」、買い物代行サービスの「GoMart」、決済サービスの「GoPay」、さらにはリラクセーションサービスを自宅に呼べる「GoMassage」、家事代行の「GoClean」、ビデオオンデマンドサービスの「GoPlay」までそろえる。東南アジア全体では200万人を超えるドライバーとユーザーをつなぎ、年間20億を超えるトランザクションを処理しているという。
このように多種多彩なサービスを統合することで、配車サービスのドライバーは乗客がいないすき間時間にフードデリバリーや小型荷物の宅配を行ったり、各種サービスの提供者をユーザーの自宅に送ったりと、効率よく働けるようになるのがポイントだ。ユーザーにとっても、1つのアプリで何でもできるから、移動がしやすいし、究極のところ外出しなくても快適な生活を送れる。
そんなゴジェックがスーパーアプリの中心価値として、とりわけ重視しているのが、「移動&物流」「フード」「決済」の3分野。その理由は、「日常生活の中で絶対必要になる、トランザクションが必ず発生する強い分野だから」(ゴジェック シンガポールのゼネラルマネジャー、LIEN CHOONG LUEN氏)という。スーパーアプリの使命は、なるべく多くのユーザーとサービス提供者を引きつけ、双方のトラフィックを最大化してアプリへの依存度を高く保つこと。だから、ゴジェックが3分野に注力することは至極納得のいく戦略だろう。
MaaSもスーパーアプリ化?
翻って、日本におけるスーパーアプリの成り立ちを考えると、現在はモバイル決済アプリを軸に統合が進みつつある。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。