スーパーアプリの内部で動作する個別のサービスは「ミニアプリ」と呼ばれる。従来のアプリと異なるのは、モバイル決済や予約などリアルの店舗やサービスと連携するための機能を簡単に実装できること。中国のような爆発的な広がりは日本でも期待できるのか。ミニアプリの可能性を追った。

中国のスーパーアプリ「ウィーチャット」「アリペイ」上では多彩なミニアプリを配信している
中国のスーパーアプリ「ウィーチャット」「アリペイ」上では多彩なミニアプリを配信している

 中国に住み始めると、それがなくては生活できないというアプリがある。最も強力なスーパーアプリといわれる騰訊控股(テンセント)の「微信(ウィーチャット)」だ。月間アクティブユーザー数(MAU)は11.5億。仮に利用者の多くが中国人だと考えると、中国の人口14億人の約8割に当たるという巨大サービスである。

 ユーザーにとって何が便利なのか。それを説明する前に、ウィーチャットの基本情報を少し紹介しよう。ウィーチャットは元はLINEのようなメッセージアプリで、個人間のメッセージだけでなく、ツイッターやフェイスブックのようなSNSの仕組みを内包する。「中国ではビジネスの商談でつながるのも、名刺交換もウィーチャットが当たり前。本当にウィーチャットが生活の中心になっている」と、メルカリ出身で中国のアプリ事情に詳しく、中国情報メディア『ChinaStartupNews』を運営する家田昇悟氏は説明する。中国では、政府の方針で海外のネットサービスが進出できないこともあり、国産サービスのウィーチャットが爆発的に普及した。

ウィーチャットのミニアプリの例。検索やメニューから選ぶだけで起動できる。利用する前にダウンロードは必要なく、使い勝手はWebページに近い。IDやパスワードの入力をせずに、各サービスでモバイル決済ができる
ウィーチャットのミニアプリの例。検索やメニューから選ぶだけで起動できる。利用する前にダウンロードは必要なく、使い勝手はWebページに近い。IDやパスワードの入力をせずに、各サービスでモバイル決済ができる

200万を超えるミニアプリが登場

 その勢いをさらに増したのが2017年のスーパーアプリ化だ。ウィーチャット上で動くミニアプリ(ミニプログラムとも呼ばれる)の機能を加え、「ありとあらゆるものがこの中で完結する」(家田氏)ための仕組みを整えた。衣食住はもちろん、交通、金融、今回の新型コロナウイルスなどの情報も配信する健康関連、中にはマッチングのようなサービスまである。ミニアプリの種類は200万を超える。そのほか、中国EC最大手アリババ集団のスマホ決済サービス「支付宝(アリペイ)」も18年にミニアプリに対応し、ミニアプリの数は20万超に達している。

 それだけの数があると、せっかくミニアプリを投入しても、ほかのミニアプリに埋もれてしまいそうだが、「アプリのトップ画面にユーザーの目に触れるための露出機会を提供している」(アリババジャパン)という。例えば、中国人が日本を旅行しているときには日本のデパートや日本で使えるクーポンのミニアプリを表示する、といった具合に、ユーザーの利用動向や位置情報に合わせておすすめのミニアプリを提示する。

 ユーザー同士の口コミ効果も大きい。「このお店のスイーツがおいしかった」。友人がSNSに書き込んだリンクを開くと、店舗のミニアプリが開き、そのスイーツの紹介が出てくる。アプリストアを開いてインストールする手間は必要なく、即座に開く。気に入れば、その場で事前注文をしたり、店の予約などができたりする。「ユーザーにとって一番便利なのは、従来のアプリのようなダウンロードという概念がなくなり、スムーズに使えること」(家田氏)

 もちろん各種のミニアプリはウィーチャットやアリペイのIDと紐付いており、新しいミニアプリを使う際に、IDやパスワード、クレジットカード番号などを入力する手間は必要ない。中国では、店舗にミニアプリを開くためのQRコードを貼っておき、それを読み込むことで顧客に注文や決済をしてもらうといった使い方も広がっているという。オンラインからオフラインだけでなく、オフラインからオンラインへの流れも活性化しているというわけだ。

スーパーアプリとその中で動くミニアプリの仕組みは、ユーザーとサービス事業者の双方にメリットがある
スーパーアプリとその中で動くミニアプリの仕組みは、ユーザーとサービス事業者の双方にメリットがある

ユーザーの母体数に魅力

 ミニアプリは、第三者の事業者が開発し、スーパーアプリ上で配信できる。これらミニアプリを展開する店舗やサービス事業者にとって一番の魅力は、ウィーチャットやアリペイなどスーパーアプリが持つ多くのユーザー基盤にリーチできることだ。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>