2011年に個人間のチャットツールとして登場したLINE。現在の国内月間アクティブユーザー数(MAU)は8300万人で、「公式アカウント」を通した強力なマーケティングツールとしても定着した。20年後半にヤフー統合も控え、スーパーアプリとしてどう進化を目指すのか。LINE取締役CSMOの舛田淳氏に聞いた(関連記事:LINEやドコモが推進 マーケ激変、店に客呼ぶ「スーパーアプリ」)。

LINE取締役CSMO(チーフ・ストラテジー・アンド・マーケティング・オフィサー)の舛田淳氏
LINE取締役CSMO(チーフ・ストラテジー・アンド・マーケティング・オフィサー)の舛田淳氏

LINEはいつからスーパーアプリ推進の戦略を打ち出しているのでしょうか。

実はLINEの誕生当初から、スーパーアプリ的な思想を持ち、ここまで取り組んできた。単品のメッセンジャーとしての役割を進化させ、プラットフォーム化することを目指すと言い続けてきた。ただ当時は複数のLINE発のアプリを複数配信し、それぞれを連携させるプラットフォームを作ろうとしていた。

 そこを進化させ、2014年にスマートポータル宣言をした。これが現在のスーパーアプリに近い概念となる。従来のアプリからアプリへと連携させる生態系ではなく、アプリの中で多数のサービスを展開しようとする考え方だ。

 ニュースをはじめとした情報コンテンツのほか、道案内をするカーナビ、フードデリバリーなど生活を支えるサービスを提供し、ライフプラットフォームとしての機能を持たせるというものだ。14年以降、5年をかけて取り組んできた。

 19年のLINEカンファレンスでは、そうした取り組みのベクトルを変えずに発展させようと、ミニアプリ「LINE Mini app」を発表した。「アプリからミニアプリへ」という考えの下、現在のトレンドであるOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)という概念を推進していく。オンラインとオフラインの体験を融合させ、ユーザーに価値を提供し、店舗に対しても統合的なソリューションを提供する。

 我々もアジア圏で広がるスーパーアプリの1つとして名乗りを上げたという形になる。ただ、LINEの日常に密着したサービスを追求するという姿勢は当初から変わりない。

流通するアプリの90%はゾンビ化

多数のサービスを1つのアプリにまとめる理由は。

もうスマートフォンのマーケットは成熟し始めている。その中で、ユーザーは一時期ほどアプリを落とさないようになってきた。アプリストアを見に行くことも少なくなっている。個人が普段利用しているアプリの数は、8個前後といわれ、入れ替わりが少ない。一方で、1つのアプリのライフタイムが非常に伸びている。

 実際にアプリのランキングを見ると、昔からあるアプリが引き続き上位に入り続けている。LINEのような定番のアプリが引き続き上位にある。業界内では90%以上のアプリはゾンビ化しているとよくいわれる。アプリデベロッパーがかなり苦労してアプリを作り、世の中に公表しても、使っていただけない状況になりつつある。

 そうした中で新しくネーティブアプリを増やすのは正しいのか。それではユーザーもアプリの供給側も幸せではない。ユーザーが求める世界が何かを追求すると、1つのアプリの中で簡単に使ってもらえるスーパーアプリに行き着く。

舛田氏は、スーパーアプリの中核となるサービスは「日常的なものでなければならない」と話す
舛田氏は、スーパーアプリの中核となるサービスは「日常的なものでなければならない」と話す

スーパーアプリではどんなサービスが中核となるのでしょうか。

どんなサービスを組み込むか、レシピとして何が必要なのか、を考え続けている。1つの結論は、日常的なものでないといけない、ということだ。ここで指している「日常」とは年齢、性別、学生か社会人かといった生活環境が異なっていても変わらない、ずっと人々の中心にある行動を指す。

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