モバイル決済を核に小売り、MaaS、金融など日常に必要なサービスを集約したスーパーアプリが、アジア圏に続き日本でも広がりつつある。オンラインとオフラインの融合を加速する新基盤は、かつてのiモードやAppStoreの登場時と同様にサービスやマーケティングのあり方を一変させる可能性がある。

PayPayは2020年内に外部の金融関連企業との連携を進めながら、PayPayアプリに金融サービスを加え、スーパーアプリ化を加速する方針を示した
PayPayは2020年内に外部の金融関連企業との連携を進めながら、PayPayアプリに金融サービスを加え、スーパーアプリ化を加速する方針を示した

 日本にスーパーアプリの波が押し寄せている。スーパーアプリとは、モバイル決済の機能を備えたアプリ上で、多彩な店舗やサービスを利用するためのミニアプリ(ミニプログラムとも呼ばれる)を実行できるようにしたプラットフォームのこと。

 その代表は、中国では11億の月間アクティブユーザー数(MAU)を誇る巨大サービス騰訊控股(テンセント)の「微信(ウィーチャット)」、同じく9億人のアリババ集団の「支付宝(アリペイ)」だ。

 「あらゆるSNSの機能を内包するウィーチャットは中国人ユーザーにとって生活の中心。スーパーアプリ化することで、さらに手放せない存在になった」と、メルカリ出身で中国のアプリ事情に詳しい家田昇悟氏は説明する。ライドシェア、フードデリバリー、グルメ情報、旅行や健康とあらゆるサービスを集約し、IDやパスワードを入力せずに、スムーズに決済できる。もはや1日の中で他のアプリに切り替える必要性を感じさせないほど、ユーザーの生活に密着する存在になっている。

ドコモもKDDIもスーパーアプリ

 日本ではまだ本格的なスーパーアプリ時代は到来していない。しかし、その潮目が一気に変わりつつある。

 日本やアジア圏のユーザーに向けたきめ細かなサービスでGAFAに対抗する――。2019年11月に発表となったヤフーとLINEの統合こそが、比類のないスーパーアプリの完成を目指す宣言だったと言える。ヤフーの親会社Zホールディングス(ZHD)の川邊健太郎社長は「ヤフーの広範囲なサービスを押さえつつ、LINEのユーザーフレンドリーな使い勝手と組み合わせる。そうしたスーパーアプリの流れが最大の武器になる」と宣言。スーパーアプリ化をサービス統合の基軸に置き、GAFAに対抗すると説明した。

スーパーアプリ戦略を公表している主な国内のサービス
スーパーアプリ戦略を公表している主な国内のサービス

 スーパーアプリは、米アップルやグーグルが牛耳る既存のアプリ経済の在り方を一変させる可能性がある。LINEのような、一定規模のユーザー基盤を持つサービスがスーパーアプリを軌道に乗せたとなれば、ネット関連の企業だけでなく、リアルの店舗やサービスを営むあらゆる業界が無視できないプラットフォームになるだろう。その起点となるのは、ヤフーとの統合を完了する20年秋であることは間違いない。

 同じソフトバンク系のモバイル決済サービス「PayPay」もスーパーアプリ化を進める方針を示している。現状では、決済以外の機能はタクシー配車やTポイントとの連携機能などにとどまるが、今後「ますます多くの用途で使っていただけるスーパーアプリの環境をつくっていく」(PayPayの中山一郎社長執行役員CEO)として、20年中には金融サービスを追加する。

 通信回線というインフラを押さえてきた通信事業者も、スーパーアプリをめぐるサービス基盤の勢力争いに名のりを上げる。NTTドコモはモバイル決済サービスの「d払い」で、交通系サービスや飲食店と連携するミニアプリの機能を搭載した。KDDIは「au PAY」で、同系列のじぶん銀行などの金融サービスを統合することで、スーパーアプリ化を目指す方針を示している。

アジア圏はサービス多彩なポータルが人気

 アジア圏ではウィーチャットやアリペイのほか、インドネシアの「Go-Jek(ゴジェック)」、シンガポールの「Grab(グラブ)」とライドシェアやMaaSを軸としたスーパーアプリが広がった。日本においても、スーパーアプリが広がる可能性はどこまであるのか。

 LINEの各種サービスを統括するCSMO(チーフ・ストラテジー・アンド・マーケティング・オフィサー)の舛田淳氏は「10年前ほど前から、欧米とアジアでは、サービスのあるべき姿は違うことが見えてきた」と話す。例えば、欧米ではグーグルの検索ページに代表されるシンプルな世界観が好まれるが「日本、韓国、中国とアジア諸国では、さまざまなサービスが付帯するヤフーのような検索ポータルが残った」(舛田氏)。

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