NTTコミュニケーションズは新しい企業理念や信条を策定する「REBORN」プロジェクトを展開。2019年5月に中身を固め、社内に浸透させるためBIOTOPE(東京・目黒)と共に、思いや意図を込めた「ストーリーブック」づくり、レゴを使った幹部研修などを推進した。活動の背景を両社の担当者が語った。

BIOTOPEクリエイティブ カタリスト/イントラプレナーシップ イネーブラーの小林 泰紘氏(左)、NTTコミュニケーションズ経営企画部デジタル・カイゼン・デザイン室担当課長の金 智之氏(中)と同主査の野添貴之氏(右) (写真/丸毛 透)
BIOTOPEクリエイティブ カタリスト/イントラプレナーシップ イネーブラーの小林 泰紘氏(左)、NTTコミュニケーションズ経営企画部デジタル・カイゼン・デザイン室担当課長の金 智之氏(中)と同主査の野添貴之氏(右) (写真/丸毛 透)

 2019年7月に創立20周年を迎えたNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、第2の創業期として「REBORN」をキーワードにデジタルトランスフォーメーション時代の新しい企業理念や信条を策定した。企業理念は「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」で、信条は「自ら始める」「共に高める」「社会に応える」とした。これを社内にいかに浸透させるかが課題だった。

小林氏(以下:小林) BIOTOPEは19年4月に「REBORN」で策定した企業理念や信条の浸透について、ご相談を受けました。当時はどのような状況にあったのでしょうか。

金氏(以下:金) 私たちはREBORNプロジェクトの立ち上げから事務局運営メンバーとして、企業理念や信条の策定を進めてきました。メンバーを公募で集め、4カ月間も検討した結果が内容に結び付いたのです。活動自体は実は16年ぐらいから進めていました。デジタルトランスフォーメーションが進むなかで、NTTコミュニケーションズらしさをどう打ち出すべきかに悩んでいたからです。

野添氏(以下:野添) 私は以前、広報室でコーポレート・ブランディングを担当していました。企業広告やコーポレートスローガンを手掛けていましたが、「クラウド」「IoT」などITのキーワードを連ねても、他社にはない自社ならではのメッセージ展開にまでは至っていませんでした。そもそも自分たちが目指す方向はどこか、自分たちの存在意義は何かを明確にしないと、この壁は突破できないと考えました。

 リブランディングをするにしてもデザインや見せ方など表面的な“お化粧”では、実力以上に見せようとするだけです。やはり軸となるもの、芯があってこそ。それが、どこにあるのか。まずは大元であるNTTコミュニケーションズならではの価値とは何かを探ることから始めたのです。

 このためメンバーを公募する前に30数人の幹部から社員まで幅広くインタビューをしました。一人当たり約1~2時間もかけ、会社の課題や未来を語ってもらったのです。想像以上にたくさんの課題が出てきたので、それらの内容を分析して幹部合宿で共有することも行っています。

共感できるストーリーを

野添 このインタビューを通じて、「会社の存在意義の曖昧化」という課題があることなど、理念策定に向けて我々があらかじめ立てていた仮説も検証できました。

 ここまでで表出化できた課題の解決に向け、インタビューで語られた熱い思いや希望も大事にしながら、企業理念や信条の策定を開始しました。3カ月かけた活動では、メンバーの約100人が毎週のようにワークショップを実施しました。夜遅くまで議論もしました。その結果、熱い言葉として企業理念や信条を固めたものの、やはりただの言葉でしかありません。言葉だけを冊子に掲載しただけでは、我々の熱い議論は社内に伝わらないでしょう。社内に浸透させるためのノウハウもありません。そこでBIOTOPEの手を借りようと考えたのです。

REBORNプロジェクトで策定した、NTTコミュニケーションズの企業理念と信条
REBORNプロジェクトで策定した、NTTコミュニケーションズの企業理念と信条

小林 そこで、ご提案したのがパーパス・ブランディングの手法でした。従来のようにトップダウンで押し付け、囲い込みを強化していくのではなく、求心力となる大きな目的や存在意義を定め、一人ひとりがそれを自分ごと化しながら、変革を“生きたもの”として実践・伝播させていくアプローチです。REBORNが目指す「自律的に探索や挑戦、創造を仕掛けていく集団になる」という、そもそもの変革テーマを考えても、こうしたアプローチが鍵になると思っていましたし、そのためにまず重要になるのが共感できるストーリー(物語)でした。

 そこで、言葉として定められた理念と信条の背後にある意図や思いを紡ぎ、また自社の歴史や事業テーマである情報通信に加えてコミュニケーションとは何かなども踏まえ、これに時代の変遷まで掛け合わせながら、企業理念や信条を支えるストーリーのデザインから始めていきました。

野添 企業の歴史からひも解いていくという考え方に共感しました。理念をつくるときも、安易に他社事例を持ち出すのではなく、メンバーを過去チーム、現在チーム、未来チームに分けて、自分たちのDNAであるキーワードを徹底的にあぶり出していました。提案を受けて、BIOTOPEさんとはあらためてこの会社や通信という事業が社会に果たしてきた役割が何で、これから何ができるのかを議論していきました。

 企業の理念や信条をつくるとき、私は創業当時の状況も調べました。ジェネレーションギャップのあるメンバーを一つにまとめるにはどうしたらいいかと考え、これまでの歴史を振り返ったのです。なぜNTTが電電公社から民営企業になったのか、当時の経営トップだった真藤恒さんにはどんな思いがあったのか、NTTのロゴを作ったデザイナーの亀倉雄策さんにはどんな意図があったのか。そして民営化に当たり、なぜNTTコミュニケーションズができたのか。調べていくと関心が高まり、実際に真藤さんや亀倉さんと一緒に仕事をした方にも話を聞きに行きました。真藤さんが書いた書籍も読んで、すっかり感化されました(笑)。

野添 BITOPEさんと情報通信そのものの歴史を深く掘り下げる機会があり、自社の視点だけでなく、情報通信の歴史に関する視点から、NTTやNTTコミュニケーションズの位置付けを理解することができました。

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