価値観が大きく変化する今こそ、インナーブランディングが必要だ。そんな問題意識で企画した特集の第4回は、京浜急行電鉄の企業ミュージアム「京急ミュージアム」。2020年1月にオープンし、巨大ジオラマや古の名車両が鉄道好きに大人気だが、実は社内向けのインナーブランディングという重要な役割も担う。

「京急ミュージアム」の館内全景。手前の「京急ヒストリー」のコーナーでは昭和初期から活躍した京急車両「デハ230形・デハ236号」を展示。車内では京急の歴史を紹介。入場無料だがオープン以降、抽選による1日300人の入場制限を設けている。2月26日以降の平日は当日入館が可能になる(混雑時、学校の長期休暇期間を除く)
「京急ミュージアム」の館内全景。手前の「京急ヒストリー」のコーナーでは昭和初期から活躍した京急車両「デハ230形・デハ236号」を展示。車内では京急の歴史を紹介。入場無料だがオープン以降、抽選による1日300人の入場制限を設けている。2月26日以降の平日は当日入館が可能になる(混雑時、学校の長期休暇期間を除く)

 京浜急行電鉄(以下、京急)は2020年1月21日、横浜・みなとみらい21地区の京急グループ本社1階に、企業ミュージアム「京急ミュージアム」をオープンした。京急ミュージアムは、「『本物』を見て、触れて、楽しむ」をコンセプトに、京急創立120周年事業の一環として整備したもの。

 館内には、昭和初期から活躍した歴史的車両を、約2年がかりで修復した「デハ230形」を展示するほか、京急沿線を再現した「京急ラインジオラマ」や実写映像の運転体験コーナー、プラレールでオリジナルの京急車両を作成できる「マイ車両工場」など、多様な展示や体験を用意。京急グループの魅力をユーザーに向けて発信する。

<特集 インナーブランディングの時代>
【第1回】今こそ社員向けブランディング 大企業もスタートアップ企業も
【第2回】知名度無くしたOEM産地がインナーブランディングで復活するまで
【第3回】「すべては、猫様のために。」 技術×猫愛で好調スタートアップ
【第4回】京急本社ビルがミュージアムに 人々の笑顔が社員の意識を変える ←今回はココ
「京急ラインジオラマ」は沿線に実際にある建物を再現するなど、本物さながらの風景の中を走る、長さ約12メートルのジオラマ。その中を走行する鉄道模型を、模型の先頭に搭載したカメラ映像を見ながら、本物の800形電車運転台で操作できる(1回100円、税込み、以下同)
「京急ラインジオラマ」は沿線に実際にある建物を再現するなど、本物さながらの風景の中を走る、長さ約12メートルのジオラマ。その中を走行する鉄道模型を、模型の先頭に搭載したカメラ映像を見ながら、本物の800形電車運転台で操作できる(1回100円、税込み、以下同)

 一方で京急ミュージアムには、本社ビルで働いている京急グループの社員向けのインナーブランディングという、もう一つの大きな役割がある。京急鉄道本部運輸営業部営業企画課課長補佐の飯島学氏は次のように説明する。

 「オフィスビルの1階にあるミュージアムなので、お客さんが京急の車両や展示物を楽しむ姿を、社員は毎日目の当たりにできる。自分たちの会社は世の中に必要とされている。自分の仕事は人々の役に立っている。そんな実感と誇りを持って出社できる」

 オフィスの受付とエントランスは2階にあるが、フロアの一部が1階のミュージアム部分の吹き抜けになっており、にぎわいの様子が自然に聞こえてくる。「オープン以前は『本社の1階で子供が走り回っているなんて』と、社内から否定的な意見が上がることを危惧していたが、開業以降も、そんな声は全く出なかった」と飯島氏はいう。

「鉄道シミュレーション」は、本物の新1000形電車運転台による実写映像の運転シミュレーターを体験できる(1回500円)
「鉄道シミュレーション」は、本物の新1000形電車運転台による実写映像の運転シミュレーターを体験できる(1回500円)
次ページ以降の内容
・家族にも仕事への理解が広がる
・「求心力の低下」はあらゆる企業にとっての課題

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