明智光秀を主人公とするNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」に期待を寄せているのが、光秀にゆかりの深いエリアの自治体だ。放送をきっかけに観光を促進しようと14自治体が協議会を結成して、LINEで話せる「明智光秀AI」を開発。その舞台裏を聞いた。

14自治体からなる「明智光秀AI協議会」が、「明智光秀AI」をリリース
14自治体からなる「明智光秀AI協議会」が、「明智光秀AI」をリリース

 「おはよう」
 「うむ。良い挨拶じゃ」
 「大河ドラマ見てる?」
 「わしとしては思い出したくない出来事もたくさんあるが、あの頃のわしの思いを少しでも多くのものに知ってもらう良い機会じゃと思うておる」
 「本能寺ってどこ?」
 「本能寺はここじゃ(マップを表示)」

 こんな会話がLINEの公式アカウント上で楽しめるAIチャットボット「明智光秀AI」が登場している。2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公・明智光秀をAIとして蘇(よみがえ)らせ、観光客を誘致しようと、光秀にゆかりのある14の自治体が共同で2019年12月16日から運用を開始した。光秀AIは、ユーザーとの会話を通じて各地の名所やイベント情報を発信。ドラマの盛り上がりを地域経済の活性化につなげる考えだ。

明智光秀AIが歴史や観光情報に“柔軟に”回答してくれる
明智光秀AIが歴史や観光情報に“柔軟に”回答してくれる

 きっかけは、京都府の福知山市が2014年から市民向けに開設しているLINEアカウントのリニューアルについてLINEに相談をもちかけたことだった。自治体のLINEアカウント開設・運用を支援するLINE公共政策室行政イノベーション支援チームマネージャーの村井宗明氏は、「そのとき浮上したのが、20年1月からの放送が決まっていた光秀主役の大河ドラマに伴う観光強化策だった」と振り返る。市内には、光秀が織田信長の命を受けて丹波を平定し築城した福知山城がある。

 福知山市とLINEは19年3月、観光振興や子育て支援など地域社会の課題解決に取り組むことを目的に「LINEパートナーシップ自治体」として提携を発表。2019年度のテーマとして、半自動チャットボットを搭載した「福知山市子育て相談アカウント」の開設(19年9月から運用開始)、明智光秀をテーマとする観光用AIを実装したLINE公式アカウントの共同開発を掲げ、後者については複数の自治体に参加を呼び掛けることにした。光秀ゆかりの地は、出身地とされる岐阜県恵那市、可児市、本能寺のある京都市、光秀の娘の玉(細川ガラシャ)が過ごした長岡京市など広域に及ぶためだ。

 この呼びかけに、京都府亀岡市、岐阜県可児市、滋賀県大津市、岐阜県岐阜市、京都府長岡京市、滋賀県、岐阜県恵那市、京都府南丹市、京都府京都市、滋賀県近江八幡市、岐阜県土岐市、京都府京丹後市、福井県(加盟順)が応じ、「明智光秀AI協議会」を設立。「光秀の命日である6月14日に大津市の西教寺で行われる法要イベントに、ゆかりの自治体が参加していたことで一気に加盟が進んだ」(村井氏)。大津市前市長の越直美氏(1975年生まれ)や岐阜市市長の柴橋正直氏(1979年生まれ)ら、自らLINEを利用する若い市長の理解と参画が、企画の実現を後押しした格好だ。なお参画料は一自治体あたり60万円という。

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