「台湾の流通の父」と呼ばれ、今なお台湾の経済界から敬愛される徐重仁。長期連載の締めくくりとして、ウィズコロナ時代の事業の再生と成長に向けて経営者が成すべきことや、日本と台湾の間でビジネスを活性化させる秘訣などについて語ってもらった。(本文敬称略)
日本の冷凍食品は台湾でもヒットする
1974年に日本で1号店がオープンした「セブン―イレブン」を嚆矢(こうし)として、その後コンビニエンスストアは目覚ましい勢いで成長を続けてきた。しかし、登場から半世紀近くが過ぎた2020年、コンビニの経営手法やフランチャイズ制度には、様々な綻びが見え始めた。
さらにこの連載がスタートした20年2月、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るい始めた。このパンデミックにより、日本や台湾の小売り・流通業界は様々な変化を迫られることとなった。“ウィズコロナ”という未知なるビジネス環境で事業を維持、発展させるため、現在の流通企業に必要なことは何か。
徐に尋ねると「コロナ禍以前にも増して『学ぶこと』が重要になります」と即答した。「特に台湾の若い経営者たちには、現在の日本の流通ビジネスをよく勉強してほしい。欧米からも学ぶべきことは多いですが、日本は台湾と文化やライフスタイルが非常に近い」
確かに流通経済が未発達だった台湾に徐がセブン―イレブンを上陸させ、総店舗数で世界第3位、人口1人当たりの店舗数で世界第1位にまで発展させたのも、「日本は私の実験室」という経営哲学の下、日本の流通業を徹底的に研究し、台湾に導入したからだ。だが、ひと昔前までならまだしも、新型コロナ対策で露呈したITインフラの整備の大幅な遅れなどを考えたとき、果たして現在の日本が台湾より先行していると言えるのだろうか。
「少なくとも流通業のカテゴリーに関しては、まだ日本が台湾よりも先を走っています」と徐は明言する。具体的に注目している商品はあるかと尋ねると、徐はデイリー・クッキング用の冷凍食品を挙げた。
「台湾にも冷凍食品はありますが、日本の冷凍食品はバラエティーに富んでいて、何より冷凍技術が優れている。電子レンジで一般家庭でも簡単に調理ができて、とてもおいしい。コロナ禍の影響から家で食事する人も増え、日本のコンビニでは小割りにした冷凍食品がヒットしている。ライフスタイルの変化もよく似ている台湾に日本の冷凍食品を持ってくれば、きっと大きなチャンスになるでしょう」
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