約5000店のセブン―イレブンをオープンさせ、「台湾の流通経済を発展させる」という一生の目的を達成した徐重仁。しかし、彼が29歳で日本留学を終えたときに抱いた夢は「台湾で流通業の最先端のスーパーを展開すること」だった。統一超商を辞めた60代半ばで人生最初の夢への挑戦が始まった。(本文敬称略)

徐がスーパーマーケット「全聯福利中心」の総裁として手掛けた泰山の全興店。店舗デザイナーの西川隆に依頼し、明るくおしゃれな外観にした
徐がスーパーマーケット「全聯福利中心」の総裁として手掛けた泰山の全興店。店舗デザイナーの西川隆に依頼し、明るくおしゃれな外観にした
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 徐は2012年に統一超商を辞職して以降、台湾当局以外のオファーは全て断り続けた。しかし、1人だけ絶対に諦めない人物がいた。スーパーマーケット「全聯(れん)福利中心(PX MART)」(以下、全聯)の林敏雄董事長(会長)である。14年1月、林董事長は記者会見を開き、1月1日付で徐重仁を全聯の総裁に迎えたと発表した。

2014年1月6日、徐重仁(写真左)を全聯の総裁に迎えたと記者発表する全聯の林敏雄董事長(同右)
2014年1月6日、徐重仁(写真左)を全聯の総裁に迎えたと記者発表する全聯の林敏雄董事長(同右)
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 全聯は台湾のスーパー業界では量販店の家楽福(カルフール)、大潤発(RTマート)を上回る最大手で、小売業界全体でもセブン―イレブンに次ぐ第2位の売上高を誇っていた。この全聯を66歳の徐が率いることとなった。

 記者会見で、林は徐を「最も尊敬する人物」とたたえた。

 「長年全聯に来てもらいたかったが、統一超商在職中は恐れ多くて声を掛けられなかった。退任後すぐにアプローチし、度重なる要請の末、ようやく就任を了承してくれた」と林は感慨深げに語った。

 なぜ徐は「実業界からの引退」を翻意して、辞職から1年半後に林の要請を受け入れたのか。

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