徐重仁が「台湾の流通の父」と呼ばれる理由の1つは、流通サブグループで多数の子会社を設立し、社長や副社長を任命し、経営者に育て上げたからだ。彼らは後に台湾の流通経済の成長をけん引する人材となる。徐は次世代リーダーをいかにして見いだし育てたのか。その社員育成法に迫る。(本文敬称略)
社長に選ぶ人材に必須の3つの条件
徐は多角化によるグループ経営戦略で、台湾だけでも30超、海外を含めれば40以上の流通関連の会社を設立した。それらを発展させるためには、会社の数だけ社長や副社長などの人材が必要だ。しかし、「流通サブグループと提携会社以外からのヘッドハンティングは、ほとんどしなかった」と徐は振り返る。つまり、徐は数十人もの「リーダーとなる人材」を自前で育てたわけだ。
子会社の半数近くが日本企業との合弁会社のため、初代社長は日本から派遣されるケースも多かった。しかし、日本に学ぶべく取り入れた経営手法も、台湾に合わせてローカライズが必要だ。そのため「日本から派遣された社長も、早い段階で流通サブグループの中で育てた生え抜きの人材にバトンタッチさせました」と徐。
子会社の社長や副社長、統一超商本部の部長など、重要なポストは全て徐自身で決めたという。選択基準について問うと、徐は「直感です」と即答した。
「人事部はリストや資料をくれますが、それだけで決めることはありません。私は普段から、役員だけでなくいろんな社員の人たちとできる限り会って話したり、一緒に食事したりします。有望な社員に関しては全員、性格や考え方、仕事のやり方、将来の希望などを理解し記憶します。だから子会社を設立した際も、『あの人に任せればいい』とひらめくのです」
直感で選んだ後、その人物が社長としてやっていけるかどうかを、どのようにして判断するのか。
「子会社の社長を選ぶとき、同じ業種のキャリアを持っているか、社長をしたことがあるかなどは問いません。知識も経験も必要ありません」と答えた後、徐は「社長に選ぶ人材に必須の3つの条件」を挙げた。
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