統一超商を中心とする流通サブグループのトップとなった徐重仁は、子会社を増やし、結束力を固め、理想のグループ経営戦略を実行した。小規模でも数の力で勝負する「アリの兵隊」戦術とは異なる発想の複合商業施設で、流通ビジネスの可能性を広げた。その経営手法に迫る。(本文敬称略)
「経営革新会議」で経営戦略をグループに浸透
2001年1月、統一超商を中心とする流通関連会社は「流通サブグループ(流通次集団)」としてまとめられた。これにより、徐の「親鳥がひな鳥を引き連れて強くなる」というグループ経営戦略が本格化した。
専門的な技術やサービスを提供するBtoB系の子会社は、統一超商を含めBtoC系の子会社や他のBtoB系の子会社をクライアントとすることで、相互にメリットを享受する関係を構築。グループ内での人材、財務、広報、情報システムなどの資産共有が強化された。また無駄な投資も減り、各子会社のリソースの浪費抑制にもつながった。
さらに物流関連子会社を活用した共同調達システムにより、グループ内の企業に必要な原材料や資材、商品の発注を統一超商がまとめた。大量一括購入することで原価を下げ、管理・販売コストを大幅に削減した。
この“親鳥とひな鳥”のグループ戦略を加速させたのが、02年ごろから徐がスタートさせたグループ全体の「経営革新会議」だ。
「経営革新会議とは『どんな事業も常にイノベーションを起こさなければならない』という意味を込めて命名した会議です。統一超商のセブン―イレブン事業にも経営革新会議があり、他の子会社にもそれぞれの経営革新会議があります」
グループに所属するすべての子会社は月に1度、取締役による経営革新会議を行い、会社の主な方針を策定する。そのリポートを携えて、各社の社長と副社長が統一超商で毎月開かれるグループ全体の経営革新会議に出席し、徐に報告してジャッジを受ける。同時に各社の情報を経営革新会議で共有し、グループ内で協力できるチャンスを検討する。
経営革新会議後、その場で決まった経営方針や共有した情報を各社に持ち帰らせ、子会社全体に浸透させることで、徐が示す経営戦略がグループ全体に行き渡る。結果、流通サブグループの結束が維持され、子会社同士の支援活動も円滑になった。
それでも、徐はまだ満足していなかった。BtoC系の子会社同士では相乗効果が得られていなかったからだ。その“最後のピース”となる新たなビジネスに徐が着目したのは、流通サブグループで指揮を執り始めた頃のこと。きっかけは高速道路の休憩所「東山サービスエリア(東山休息站)」のショッピングエリア経営権の落札だった。
台湾初のチャレンジで複合商業施設を実現
徐は当時、米国や日本の高速道路のサービスエリアや田舎のショッピングセンターなどを視察して、「複合商業施設」のビジネスモデルに注目していた。
「台湾では露店の集まりのような市場はありましたが、日本や米国の複合商業施設のように、きちんと企画運営されている店舗の集合体はありませんでした」
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