流通業界の常温物流に革命を起こした徐重仁は、台湾の流通ビジネスのさらなる進化を目指して、低温物流、出版物流の近代化に取り組んだ。その結果、新たな物流会社はセブン―イレブンの成長を後押ししながら、プロフィットセンターとして台湾の運輸業でのトップの業績をたたき出した。(本文敬称略)
1990年9月の常温物流会社「捷盟行銷(しょうめいぎょうしょう)」の設立で、徐は台湾の流通業界初の近代的な物流システムを構築した。それは台湾流通業界における物流革命の幕開けでもあった。
しかし、この革命には課題が残されていた。コンビニの主力商品となる飲食品を低温状態に保ったまま運ぶための物流、そしてコンビニには欠かせない雑誌や書籍といった出版物の物流の整備だった。
まず「低温物流」について見てみよう。
統一企業は古くから三菱商事を通じて、日清製粉、日清製油(現・日清オイリオグループ)、明治乳業(現・明治)などと提携関係を築いていた。同社の低温物流のノウハウは明治乳業から導入されたものだった。統一企業は製造業であるため、温度管理が必要な大量の商品を広範囲かつ多数の拠点に運ぶ必要がなかった。ところが統一超商でセブン―イレブンが急激に成長・発展すると、低温物流のニーズが急速に高まった。
94年に統一企業は低温物流部を設置、乳製品や肉製品、冷凍食品を生産する新市工場の敷地に新市低温物流センターを建設した。翌95年2月、同物流センターが稼働し、台湾南部にある二百数店舗のセブン―イレブンに向けて低温配送を行った。97年12月には台中に2つ目の低温物流センターが設立され、台湾中部の店舗に低温商品の配送を始めた。
しかし、この頃、セブン―イレブンの出店が加速し、低温物流部だけでは対応しきれなくなりつつあった。牛乳や乳製品などの冷蔵商品を4度(チルド)の状態、アイスクリームや冷凍食品をマイナス25度(冷凍)の状態で運ぶ低温物流のインフラのさらなる整備・拡充が必要だった。その他開発中だった「弁当」などの米飯商品は、8度の状態に保って配送しなければならなかった。
チルド、冷凍、米飯商品の配送時間を大幅に短縮
99年2月、統一超商は統一企業、ムサシノ食品、アジア食品の4社の共同出資で、セブン―イレブンで販売するための「弁当」を製造する食品会社「統一武蔵野」を設立した。(関連記事:「日本全国の駅弁を食べて来い 台湾初の『コンビニ弁当』誕生秘話」)。統一武蔵野でつくられた弁当を台湾全土のセブン―イレブンに届けるには、8度の低温状態で運べる物流システムが求められた。
この課題を解決すべく、99年3月、統一企業の低温物流部を分離・独立させる形で、冷凍(マイナス25度)・チルド(4度)・米飯(8度)の物流配送を担当する低温物流会社「統昶行銷(とうちょうぎょうしょう)」が設立された。
出資比率は統一企業が50%、統一超商が30%、統一企業のグループ会社である南聯(なんれん)国際貿易が20%。低温物流センターの経営ノウハウは、日本の明治乳業の指導によって引き継がれた。ちなみに統昶行銷は、セブン―イレブンのために設立された低温物流センターだったので、2001年、出資比率は統一超商が30%から60%、統一企業は50%から20%に変更された。
統昶行銷の配送商品数は約300品目、供給業者は約60社に上り、商品は工場とディーラーの両方から供給された。チルド商品と冷凍商品は、店舗の発注から約8時間で毎日配送する。米飯商品などのファストフードは、店舗の発注から約10時間で1日2回配送する。低温商品の平均配送費用は商品仕入れ値の約13%だった。
こうして低温商品の物流インフラは整えられたが、もう1つ近代化しなければならない物流があった。セブン―イレブンで販売する雑誌や書籍など出版物専門の配送システムだ。
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