周囲の反対を押し切って、徐重仁が8億台湾ドルの投資で構築したPOS(販売時点情報管理)システムは、出店戦略やマーケティングなどで目覚ましい成果を上げ、事業を大いに発展させた。徐が次に取り組んだのは、約40億台湾ドルを投資して、セブン―イレブン・ジャパンと同様に野村総合研究所(NRI)とNECという最強の布陣で、第2世代のPOSを開発することだった。(本文敬称略)
IT化の加速で欠品率をほぼゼロに
POSの全店導入から1年2カ月後の1997年1月、新たな発注端末GOT(グラフィック・オーダー・ターミナル)が台湾のセブン―イレブンの店舗総合情報システムに加わった。GOTでは発注商品に関連したデータが画面上にグラフィカルに表示されるので、スタッフは一目で商品情報を確認できる。さらに商品の登録がポータブルなハンディーターミナルで行えるので、作業の精度と効率が格段にアップした。
POS、EOS(電子受発注システム)、GOTによる販売や発注、納品、在庫管理のIT化は、セブン―イレブンの小売りビジネスを大きく進化させた。POSとEOSの導入前、各商品の需要量のデータは店舗が発注してから数日遅れで物流センターに集約された。そのデータを基に、ベンダーから物流センターに商品が集められ、そこから各店舗に配送していた。
「発注して数日たたないと商品は店舗に来ないので、間に合わなくてよく欠品になっていた。しかし、EOSとPOSを導入してからは臨時の追加発注もできるので、今日発注すれば翌日には補充できるようになりました」と徐は説明する。
在庫がなくなる前に先んじて手を打てるようにもなった。
「POSシステムでは、どういった商品がどんなふうに売れているかという状況のデータも分析できるので、販売予測を基にした発注の精度も向上しました」
かつて22%もあった平均欠品率は、POSシステムの導入後、ほとんどゼロに抑えられ、売り上げの向上につながった。さらに在庫を低減することで、店舗、ベンダー、物流センターのコストも大幅に削減された。
陳列テストの期間を3分の1に短縮
POSシステムは最前線となる各店舗のマーケティングも飛躍的に進歩させた。一般的な広さが50~60坪(約165~200平方メートル)のコンビニエンスストアのSKU(商品管理の最小単位、品目)は、せいぜい2500~3000。SKUが1万以上もあるスーパーやさらに桁が違う百貨店に比べれば、店頭に陳列できる商品の種類や数も、バックヤードに在庫できる数もかなり限られている。
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