統一超商の社長となった徐重仁は、台湾の小売業の近代化に先べんを付けるため、日本のセブン―イレブンが採用していた総合店舗情報システムと同等のシステムの導入に挑んだ。流通経済が未成熟な台湾でその挑戦を成功させるためには、立ちはだかるいくつもの壁を打ち破らなければならなかった。(本文敬称略)

EOSのモバイル端末。右端のキーを使って8桁の商品番号などを打ち込む
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日本のPOSとEOBの実力を見抜く

 台湾の流通経済が発展途上にある中、徐は小売業初となるEOS(電子受発注システム)やPOS(販売時点情報管理)の本格導入を急いだ。その理由は、コンビニエンスストア事業の手本として先行するセブン―イレブン・ジャパンが、POSの導入で急成長を遂げていたからだ。

 統一超商の設立から4カ月後の1978年8月、セブン―イレブン・ジャパンは日本電気(NEC)と共同で発注端末機「ターミナル7」を開発・導入し、発注番号をバーコードにして作業をIT化した。さらにセブン―イレブン・ジャパンは、統一超商が解散する1カ月前の82年10月に東京電気(現・東芝テック)と共同開発したPOSレジスター、翌月にはNECと共同開発した発注端末機EOB(電子発注台帳)の導入を開始した。

 EOBでは発注専用のハンディースキャナーでプライスカードをスキャンし、売れ行きと在庫数を確認して発注データを本部に転送する。POSはバーコードをスキャンして商品を単品登録できるので、販売時の打ち込みミスがなくなり、店舗スタッフは面倒なレジ打ち作業から解放された。

 日本のセブン―イレブンは、EOBとPOSの導入で発注・販売・在庫の管理の効率と精度を格段に向上させて、欠品や過剰在庫を防いだ。さらにPOSでは会計時に「客層キー」を打つことで顧客の年代や性別のデータを蓄積し、マーケティングの強力な武器とした。

 最初の統一超商時代はもちろん、パン工場への左遷期間も日本のセブン―イレブンの動向をフォローし、研究していた徐は、このPOSとEOBがコンビニ事業の発展に必要不可欠だと見抜いた。そこで86年、再び統一超商が設立され社長となった徐は、台湾のセブン―イレブンにもできるだけ早くPOSとEOBを導入したいと考えた。

 しかし、そこにはどうしても越えられない壁があった。

米サウスランド社の指導を拒んで単品管理

 当時、台湾にはまだバーコードなどなかった。そのため、バーコードのスキャンを前提とするPOSは使えなかった。

 それでも、徐は諦めなかった。

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