台湾セブン―イレブンの第100号店がオープンした頃、直営店だけでの店舗拡大は限界に達した。そこでフランチャイズシステムを導入するに当たり、統一超商の社長に就任した徐重仁が加盟店に課した条件は「夫婦経営」だった。ハードルは高かったが社内結婚も加速した。そのワケは……。(本文敬称略)

台湾セブン―イレブンの出店が加速。フランチャイズの加盟店になるには「夫婦経営」が条件だったが、やがてそれだけでは難しくなってきた…… ※画像はイメージ(写真提供:Mali lucky/Shutterstock.com)
台湾セブン―イレブンの出店が加速。フランチャイズの加盟店になるには「夫婦経営」が条件だったが、やがてそれだけでは難しくなってきた…… ※画像はイメージ(写真提供:Mali lucky/Shutterstock.com)

24時間営業の深夜シフトが課題

 フランチャイズの加盟店として独立したいと希望する社員に「夫婦限定」という高いハードルを設けた理由について、徐は「家族経営が一番いい」と答えた。本部も含めたこの家族主義こそが、徐の経営哲学の根幹だった(関連記事「加盟店になるには夫婦が条件 独自のフランチャイズ戦略で急成長」)。では、夫婦でコンビニエンスストアを経営することには、具体的にどんなメリットがあるのか。

 「コンビニの仕事には、昼シフト、夜シフトなど、働く時間帯がいろいろあります。当時の台湾で、シフト制を外部から雇った人でこなすのはちょっと無理だと思いました。でも、夫婦で一緒にやれば、お互い力になってカバーし合えます」

 台湾のセブン―イレブンは、徐がパン工場に異動させられていた1983年、正式に24時間営業を始めていた。そのため、夜から翌朝にかけての深夜の時間帯も店員が必要だった。直営店なら本社社員の「夜勤」などで賄えたが、フランチャイズとなるとそうはいかない。

 小売り・流通業が日米に比べて未成熟で、小売店の24時間営業などほとんどなく、コンビニの認知度も低かった当時の台湾で、深夜に店舗で働いてくれる社員やアルバイトを雇うのは難しかった。必然的に、夫が夜から翌朝までの深夜シフトを務め、朝から夕方までの時間帯を妻が管理するという業務形態が求められた。

 「それに夫婦が共同で働いたら安心できます。昔から台湾でも日本でも、小さな小売店や飲食店のほとんどが夫婦で営まれてきました。特にコンビニの仕事の中身は非常に細かいですから、お互いに何をやっているのか、普段から分かっている夫婦で組んだほうが成功の確率が高まります」

加盟店になりたくてパートナー探しが活発化

 確かに24時間営業のコンビニの場合、深夜のシフトをこなすためには孤軍奮闘の独身者よりも、互いに助け合える夫婦のほうが有利かもしれない。ただし、それはあくまでも理想論だ。直営店の独身店主が結婚するまで待たなければならないようなフランチャイズの仕組みで、店舗展開の加速など、到底、無理な話だろう。

 「『フランチャイズの加盟店で独立したければ、夫婦で一緒にやること』という条件を付けたら、社員同士の結婚が増えました。直営店で働く社員はみんな、積極的にパートナーを探すようになり、結局、社内結婚で誕生した400組の夫婦がフランチャイズ加盟店の経営者になりました」

 社内結婚の数が増えるほど、フランチャイズの加盟店になることは魅力的だった。理由は、徐の「取り分の決め方」にもあった。本社とフランチャイズ加盟店の利益分配について、徐は米サウスランド社のマニュアルに従うわけでも、日本のセブン―イレブンをまねるわけでもなく、独自に決めた。しかも一律ではなく、それぞれ個別のケースに合わせたのだ。

 「なぜ、セブン―イレブンのフランチャイズ加盟店になりたいのか。一番のポイントは『収入』です。希望者は直営店の店長や店員、つまり統一超商の社員ですから、それまでの給料を参考にしながら、加盟店として独立したとき、以前より収入が増えるように設定したのです」

 取り分だけではなかった。通常、フランチャイズ制度では、本部が加盟店の粗利益を保証する。粗利益が前もって決められた一定の金額に達しなければ、本部が補助金を出して補填する。徐はこの“一定の金額”にもこだわらなかった。

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