SNS黎明(れいめい)期から無印良品の「中の人」として活躍。400万人超のファン獲得を主導した風間公太氏が、SNSの現在地と未来を探る対談企画。今回は「森美術館」のSNSを担当する洞田貫晋一朗氏に、美術館ならではの活用ノウハウなどを聞いた。
風間公太氏(以下、風間氏) 洞田貫さんは森美術館SNSアカウントの立ち上げ時からの担当なのでしょうか。
洞田貫晋一朗氏(以下、洞田貫氏) 森ビルに入社したのが2006年で、まずは六本木ヒルズの「六本木ヒルズ展望台東京シティビュー」の運営を担当しました。そのあと「森アーツセンターギャラリー」が3年ほど、15年からは森美術館のマーケティンググループに所属しています。着任時にはすでに「Twitter」と「Facebook」は開設されていましたが、「Instagram」は私が開設しました。
風間氏 森美術館は、SNSで大きな成果を上げている注目のアカウントです。19年6月には書籍『シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略』を出版されました。企業の現役SNS担当者がこのような本を書かれることは珍しいことですし、元担当者としても共感する要素が多い内容でした。SNSはプライベートでも使用されていたのですか。
洞田貫氏 「mixi」はよく使っていました。自分で2000人から3000人ほどの大きいコミュニティーを作ってその管理者を務めたり、Facebookも今のように広がる前から使っていました。なので、森美術館のSNSを担当することになったときも、SNS自体には抵抗はなかったですね。ただし、森美術館は現代美術の美術館なので、身近な存在ではない現代美術をどうやってSNSでリーチさせていくか、個人でSNSアカウントを運用するのとはだいぶ違うだろうなという不安はありました。
美術館はSNSをどう活用しているか
風間氏 そもそも他の美術館も含め、業界全体でのSNS活用はどんな状況ですか。
洞田貫氏 この業界はチラシやポスターが最もオーソドックスな宣伝手法で、SNSの利用はそこまで活発ではありません。私立美術館は比較的、入館者数を増やすことに重点を置いていますが、業界としては展覧会を戦略的にプロモーションするには至っていない気がします。
風間氏 SNSに限らず、マーケティングの面でデジタルの活用自体がそれほど積極的ではないのですね。
洞田貫氏 そう思います。本当はいろいろ試みたいのでしょうけれど、方法が分からない。活発にやっている美術館がたくさんあれば、情報交換もできると思います。でも実際は、「どうしたらいいんだろう?」と言っている間に、そのままになっているのだと思います。
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