ビューティーテックの中でも盛り上がりを見せているのが「スマートミラー」と呼ばれる、鏡型デバイスだ。世界各国の有力スタートアップ企業が開発している。米ラスベガスで開催された「CES 2020」では、鏡を通じて視力検査や体調管理ができる新発想のスマートミラーが登場した。
「鏡の前に立つ」という自然な行為の中で肌データを取得できれば、ユーザーの負担が軽減する。また、鏡を見る行為は肌の変化を最も感じやすいタイミングであることから、オススメ商品の提案が受け入れられる可能性が高い。そうした利点を持つスマートミラーは小売店で化粧品などのマーケティングを目的とした導入から進み始め、自宅向けの製品も登場している。
サムスン発「lululab」は美容機器連携へ
世界各国からスタートアップが集結する、CES内の展示スペース「Eureka Park」。2020年に特に存在感を示したのが韓国勢だ。サムスン電子はインキュベータープログラム「C-Lab」ブースを設けた。同プログラムは社員から新事業のアイデアを募り、育成することからスタート。現在は、社外のスタートアップ支援にも手を広げている。ブースには社内外のベンチャーの製品を展示した。
そのC-Lab卒業生の1社であるlululabは、17年に22番目の事例としてサムスンからスピンオフしたスタートアップだ。AI(人工知能)を活用したスマートミラーの開発を手掛ける。同社は、スマートミラーで取得した肌分析結果を、美容機器と連携して活用する新型のスマートミラー「LUMINI Home」を展示した。
美容機器は効果を実感できないことが、利用停止につながる。LUMINI Homeはスマートミラーで取得した肌情報をAIが解析し、肌状態に合わせて最適な美容機器の使い方を提案することで効果を可視化し、機器の継続利用を促す。美容機器は専用のスキンケア商品と合わせて使用するものも多い。肌分析結果を基に、美容機器と併せて利用するスキンケア商品の効果を最大化させ、商品のリピート購入を促す狙いもあると考えられる。
肌、メーキャップ、髪色に対応する鏡
次にAI、AR(拡張現実)を活用したバーチャルメーキャップのリーディングカンパニーとして知られる、台湾発のパーフェクトに注目した。15年創業の同社が提供する「YouCam」シリーズは、バーチャルメーキャップをはじめ、バーチャルヘアカラー、肌分析など対応分野を広げている。パーフェクトのスマートフォンアプリは全世界で8億ダウンロードを突破した。
250以上のブランドがYouCamを利用し、日本では、阪急阪神百貨店や三越伊勢丹などの百貨店がコスメカウンターにYouCam内蔵のスマートミラーを設置している。自分の顔を鏡に映すと、選択した商品を使ったメークがARでリアルタイムに合成される。実際の商品を試す前に、気軽に「商品のお試し」ができるバーチャルメーキャップサービスとして提供している。
パーフェクトによると、バーチャルメーキャップは店頭売り上げにも大きく貢献しており、導入後に2.5倍になったという実績もあるという。バーチャルであれば好きなだけ商品を試せることから、これまで接触機会のなかった色味を試せるほか、実際に試す商品をバーチャルである程度絞り込めるのもポイント。イメージと実際のギャップが縮まって購入確度が高まる。
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