米アマゾン・ドット・コムは世界最大のデジタル技術見本市「CES」で、自動車販売の近未来コンセプトを示した。実店舗やイベントで検討したカスタマイズ内容を自宅に持ち帰ってAR(拡張現実)で確認できる。自動車メーカーや販売店向けにマーケティング機能も提供する。

アマゾンが展示したクルマ販売の近未来「the future of automotive retail」
アマゾンが展示したクルマ販売の近未来「the future of automotive retail」

 アマゾンが「the future of automotive retail」として提案したのは、米ゼネラル・モーターズ(GM)の高級車キャデラックに興味を持った顧客のカスタマジャーニーをARなどデジタル技術で高度化する仕組みだ。

アマゾンの自動車販売サイトの機能をデモ用に拡張し、カスタマイズした結果を画面上で見られるようにした
アマゾンの自動車販売サイトの機能をデモ用に拡張し、カスタマイズした結果を画面上で見られるようにした

 アマゾンは現在、「Amazon Vehicles」で自動車各社のクルマを販売しているが、顧客はオプションの選択など実際の購入作業は各自動車会社のWebサイトで行う。今回の展示では、そうした機能をデモ用に拡張し、アマゾンのサイト上で外装や内装などを自由に変更し、検討できるようにした。実店舗やイベント会場などのリアルな場での活用を想定している。

 顧客は検討したオプションの内容などを電子メールで送信し、自宅で検討を続けることができる。顧客が自宅に帰ってからも検討することで、購買意欲を高めてもらう狙いだ。

カスタマイズした内容を基に、実空間の映像内で動かすことができる
カスタマイズした内容を基に、実空間の映像内で動かすことができる

 しかも、オプションなどでカスタマイズしたクルマを実写空間の中でARとして走らせることができる。ARは実サイズで表示しており、自宅の車庫に入るかどうかも確認できる。これらARについては英ゼロライトのテクノロジーを利用している。

顧客の迷いをログデータで把握

 自動車メーカーやディーラーにとっては、店舗やイベントに訪れた顧客との接点を保ち続けることができるメリットがある。

 クルマをカスタマイズする過程でどのように操作したのかといったデータを取得しており、顧客がどのようなオプションやスペックに興味を持っているのかが分かる。メーカーやディーラーにとっては、顧客がどのグレードを検討しているかを知ることにも役立つだろう。

顧客の購買行動のデータをCRM上で分析できる
顧客の購買行動のデータをCRM上で分析できる

 例えば、車体のカラーで、シルバーとブラックで迷っているということが把握できるようになる。販売担当の営業担当者がメールや会話で、「シルバーはないけどブラックの車体がある」といったお勧めも可能になる。ちなみに、米国ではディーラーにある色やグレードのクルマを買っていくのが一般的だそうだ。

 こうしたデータを米セールスフォース・ドットコムのCRM(顧客関係管理)サービスに連携させたデモも見せていた。顧客の検討状況をCRMで統合的に管理できるようになる。

ネット配信サービスの広告部分に、クルマの広告をリターゲティングしたところ
ネット配信サービスの広告部分に、クルマの広告をリターゲティングしたところ

 また、顧客への訴求を強めるため、関連広告を画面内に表示するリターゲティングの機能も備えた。ブースではアマゾンプライムのビデオを視聴した顧客に対し、キャデラックの広告を表示していた。

 アマゾンにとっては高額商品であるクルマの販売により深く関与できる。前述した通り現在はアマゾン上で比較後、各会社のサイトにリダイレクトしている。

 一方の自動車販売のディラーやメーカーは販売手法を容易にデジタル化できるメリットがある。アマゾンは整備マニュアルのデジタル化についても提案している。

車内での音声AIアシスタントも強化

 アマゾンは今回のCESで、クルマ向けのソリューション展示に本腰を入れた。米国では通勤にクルマを使うのが一般的で、その間もアマゾンのサービスを利用してもらう狙いがある。

ガソリンスタンドで車内からアレクサを利用して支払えるようにする
ガソリンスタンドで車内からアレクサを利用して支払えるようにする

 例えば、米エクソンモービルと提携し、クルマの中から音声AI(人工知能)アシスタントのアレクサで、「Alexa pay for gas(アレクサ、ガソリンを支払って)」と言うことで、ガソリン代を支払えるようにした。アマゾンの決済サービス「Amazon Pay」と連携する。

ランボルギーニのクルマにアレクサを搭載し、車内外の操作を可能にした
ランボルギーニのクルマにアレクサを搭載し、車内外の操作を可能にした

 また、伊ランボルギーニや米国の電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブとの提携を発表した。これまでトヨタ自動車や独アウディ、BMWなどに提供してきたものを拡大したものだ。カーナビゲーションや店舗検索などだけでなく、ガレージの開け閉めや自動車の機能である空調のコントロールなどが可能だ。例えば、「アレクサ、暑い」と言うと車内の温度を下げてくれる。

 今回の未来の販売シナリオは、アマゾンが販売現場のリアルなデータの取得に本腰を入れようとしてることも意味する。顧客がクルマのどのような機能に興味があるのか、購買に至るまでにどのようなカスタマジャーニーがあるのかなどを把握できるようになる。自動車メーカーやディーラーはアマゾンとの距離をどのようにとるべきか。悩ましい面もあるだろう。

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