イノベーションの実現が求められるなか、「デザインシンカー」と呼ぶ人材が注目されている。デザインシンカーとは、デザイン思考を理解して顧客と共創し、プロジェクトを成功に導き、イノベーションを推進できる人材のこと。背景には「デザイン思考の手法を机上で学んだだけでは、うまくいかない」という反省があった。

延岡氏が提唱する「SEDAモデル」。サイエンスやエンジニアリングに加え、デザインやアートの考え方までも統合することで、新たな顧客価値を生む(延岡健太郎氏の資料による)
延岡氏が提唱する「SEDAモデル」。サイエンスやエンジニアリングに加え、デザインやアートの考え方までも統合することで、新たな顧客価値を生む(延岡健太郎氏の資料による)

 「せっかくデザイン思考を学んだのにイノベーションを実現できない」「デザイン思考で新しい発想は得られにくいので、今はアート思考に関心がある」「米国流のデザイン思考の手法は、日本企業になじまないのではないか」──。デザイン思考を巡るさまざまな意見は、イノベーションの実現に対する期待と不安の表れだろう。

 なぜ、デザイン思考に対して消極的な声が出てくるのか。それはデザイン思考の手法だけを「教科書」の知識として理解し、実践の場で学んでいないケースが多いからだろう。単にワークショップに参加しただけでは、デザイン思考の手法は理解できても、顧客と効果的に共創したり、プロジェクトを成功に導いたりすることは難しい。デザイン思考を現場に落とし込む知恵が必要になる。そうした部分まで含めたスキルを持つ人材を、今回の特集では「デザインシンカー」と呼ぶ。