国際会計基準(IFRS)への準拠が義務化される2021年を待たずに、日本航空(JAL)は“使いやすさ”を掲げて利用者がマイルを消化しやすい環境作りに取り組んでいる。国際線と国内線のそれぞれで、従来のマイルの常識にとらわれない新しいアイデアのサービスを導入。マイルを消化しやすくすることで利用者の不満を解消し、ロイヤルティー向上に結びつけている。

JALは2020年4月からIFRS(国際会計基準)の任意適用を決めた
JALは2020年4月からIFRS(国際会計基準)の任意適用を決めた

 一般的に1ポイント=1円相当などポイントの価値が決まっているポイント業界で、コアファンを多く抱える航空会社のマイレージ。最大の魅力は、特典航空券に変える際に、路線や座席クラスによっては1マイル当たりの価値が2~3円、場合によっては5円を超える点だ。JALマイレージ事業部次長の西川和久氏は、「マイルの6~7割が特典航空券に交換されている」と話す。

 マイルをためる動機付けになっている特典航空券だが、泣きどころは交換できる席数に限りがあることだ。利用しやすい長期休暇シーズンや週末、人気が高いリゾート路線などは、早々と特典航空券用の枠が埋まってしまうことが多い。JALマイルの有効期限は、付与から3年間。希望の路線の特典航空券に交換できずに期限を迎えてしまうケースも少なくない。

 一部利用者のロイヤルティー意識を下げかねないこの状況をなんとかしようと、JALが新手を次々と打っている。2021年に国際会計基準(IFRS)への準拠が義務化されることから、ポイント・マイル事業者は“ためやすい”から“使いやすい”へと戦略変更の必要に迫られている。JALはそれに先立つ20年4月からIFRSの任意適用を決めている。利用者の満足度向上を主眼にマイルを消化しやすい工夫を取り入れているが、これは結果的に会計ルール変更へ対応する流れにも合致している。

国際線では一般の座席もマイルで確保可能に

 利用者にマイルを特典航空券へ交換してもらう機会を増やす新サービスの1つが、国際線向けで18年12月に開始した「特典航空券PLUS(以下、PLUS)」。通常よりも多くのマイルを使ってもらう代わりに、希望の便の座席を確保するものだ。これまで特典航空券に交換できずに諦めざるを得なかったケースでもマイル保有者は希望する便の利用を確約できる。

 狙いは当たり、開始から1年で国際線特典航空券への交換件数はPLUS導入前と比べて約2倍に上昇したという。想定を上回る結果で手応えを感じていると西川氏は話す。

 このアイデアのポイントは、特典航空券の座席枠に手を加えることなく、特典航空券の利用機会を飛躍的に上げることに成功した点にある。

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