100社に上るフードテック企業が集結したCES 2020。2011年にスタンフォード大のサイエンティストが創業したImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)は、豚の代替肉を披露。大きな話題を呼んだが、実は他にも注目すべきスタートアップが多くいた。会場をくまなく歩いたシグマクシスの岡田亜希子氏が、次世代のフードテック企業10選をお伝えする。

DNA検査に基づく新しい買い物体験を提案するスタートアップも登場(写真/DNANudgeホームページより)
DNA検査に基づく新しい買い物体験を提案するスタートアップも登場(写真/DNANudgeホームページより)

スタートアップ① 家庭の調理シーンを「見える化」

1. Drinkworks:家庭用カクテルマシン

 ビールの世界最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブと、米飲料大手のキューリグ・ドクター・ペッパーが、2017年に設立したJV(ジョイントベンチャー)が、Drinkworks(ドリンクワークス)だ。専用ポッドに入ったアルコール飲料を炭酸や水と組み合わせて、オリジナルのカクテルやビールを楽しめる家庭用カクテルマシンを提供している。18年11月に米ミズーリ州から販売を始めた。

 こうしたカウンタートップ型のカクテルやコーヒー、ビールメーカーはかなり多くの参入プレーヤーがおり、激戦区になっている。家庭のキッチンに何台も置けるものではないので、専用ポッドの価格設定や、どれほど魅力的なメニューを提案できるかがカギだ。そこでDrinkworksは、19年11月にウイスキーの「ジャックダニエル」を擁する米蒸留酒大手のBrown-Forman(ブラウン・フォーマン)との提携を発表。ジャックダニエルの他、 テキーラの「HERRADURA(エラドゥーラ)」や、リキュールの「CHAMBORD(シャンボール)」などをベースとしたカクテル開発に取り組むという。

 一方で、Drinkworksの場合は、デバイスとしてシェアを勝ち取るビジネスを志向していないようにも見える。19年10月にシアトルで開催された「スマートキッチンサミット」でDrinkworksは、データ活用の取り組みについてプレゼンした。それによると、このカクテルマシンと連動したアプリから収集したドリンク種別・時間帯別の消費量を分析し、週末のブランチ向けカクテルの需要があることを突き止めたという。彼らはすでに商品開発に着手しており、商品開発のライフサイクルの短縮化を実現した。このマシン自体の進化のみならず、今後のアンハイザーの小売店向け飲料製品の進化につながるか、興味深い。

Drinkworksのカクテルマシン(写真/Drinkworksホームページより)
Drinkworksのカクテルマシン(写真/Drinkworksホームページより)

2. PantryOn:家庭用インテリジェントシェルフ

 米スタートアップのPantryOn(パントリーオン)が提供するのは、常備している常温の食材を管理できるセンサー付きのパントリー棚。棚の上に重量センサーを設置しており、その上に加工食品や調味料などを置いておくと、残量を計測して購入タイミングを知らせる。複数の品物について、同時にモニタリング可能だ。他にも、こうした食材管理ソリューションは増えつつあり、例えばドイツの建設機械大手Liebherr(リープヘル)の家電部門は、冷蔵庫内と常温用パントリー両方の食材をカメラで撮影し、画像認識技術を使って管理するソリューションを提供している。また、米アマゾン・ドット・コムもECと連携したスマートシェルフを展開。これらは非常に単純なソリューションに見えるが、フードロスへの関心の高まりもあって注目の領域だ。レシピとの連携や、カロリー摂取量の把握など、食材管理から始まる領域の広がりにも期待したい。

PantryOnのインテリジェントシェルフ
PantryOnのインテリジェントシェルフ

3. Anova:家庭用スチーム&コンヴェクションオーブン

 低温調理(Sous-Vide、スービー)機で、日本でも知られる米Anova(アノーバ)が新製品のオーブン「Anova Precision Oven」を開発。庫内ではスービーに近い調理も可能で、スチームで食材を加熱し、オーブン機能で焼き色を付けられる。特に注目されるのは、調理操作をスマートフォンのアプリ側からコントロールしていること。スマホでレシピを選ぶだけで、調理ができる。デバイスでの制御は温度、時間、湿度設定に限っており、ソフトウエアドリブンの新世代オーブンとして開発された。

 日常の調理の手助けになる一方、人々の調理への関心が、彼らの言葉を借りると”Instagram Inspiration”といった「視覚的」「衝動的」なものから来る中で、見た目の再現性までを含めた体験づくりをしているように感じられる。同社は17年、スウェーデンの家電大手Electrolux(エレクトロラックス)に約250億円で買収され、現在も引き続きAnovaブランドが展開されている。

4. Teplo:IoTティーポット

 スタートアップのLoad & Roadが開発した「Teplo(テプロ)」は、本体の心拍センサーに指先で触れると、ユーザーの気分や体調、周囲の環境を判断し、それに応じて最適なお茶を抽出するIoTティーポットだ。専用アプリから自分に合った茶葉を選べる他、自動で回転してお茶を抽出していくティーポット内の動作を見ているだけで楽しく、お茶を飲むというリラックスした空間と時間を演出できるように工夫されている。現在、量産体制に入っており、今回のCESでも量産モデルが展示された。これまで全く進化がなかった急須のアップデートを、IoTデバイスとお茶を楽しむ体験の両方から試みている。

Teploの本体。1台299ドル(約3万2900円)で予約受付中(写真/Load&Roadホームページより)
Teploの本体。1台299ドル(約3万2900円)で予約受付中(写真/Load&Roadホームページより)
CESのTeplo展示ブース
CESのTeplo展示ブース
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