小売り向け大規模イベント「NRF 2020: Retail's Big Show & Expo」で、聴講者が詰めかけたのが米レント・ザ・ランウェイのジェニファー・ハイマンCEO(最高経営責任者)の講演だ。同社は高級デザイナーブランドや自社限定ラインの洋服を、月額制で貸し出すサブスクリプションサービスを展開。2019年にユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)に仲間入りした。注目の講演ではサービス急成長の背景としてデータの重要性を語った。
レント・ザ・ランウェイ共同創業者のハイマン氏は、米国のニュース雑誌『TIME』が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に2019年に選出されるなど、全米が注目する人物。「働く女性が洋服を選ぶ際のプレッシャーや、コストの問題といった負担を和らげたい」とハイマン氏は言う。NRF2020の講演では、そうした働く女性の課題に向き合うことで急成長したサービスの裏側を語った。
ハイマン氏は「ファッションは自身を印象付けるもの」と定義する。働く女性にとっても、選ぶ服装によって他人からの見られ方は大きく変わる。ただ、いくら高級ブランド品で着飾ったとしても「ライフスタイル、流行、体形の変化などさまざまな理由から、数回で着なくなってしまうこともある」(ハイマン氏)。そこで同氏が目を付けたのが、高級デザイナーズブランドの洋服レンタルビジネスだ。
レント・ザ・ランウェイのサブスク事業は、2種類のプランを展開する。安価な月額89ドルのプラン「Update」は、1着当たりの小売価格350ドル以下の洋服を、4着まで月に1回レンタルできる(4着の合計金額は1400ドル以下)。月額159ドルの上位プラン「Unlimited」は、3000ドル以下の洋服を一度に4着まで、好きなタイミングでレンタル・交換できる(合計金額の上限はない)。その他、期間を4日または8日で設定可能な1回限りのレンタルサービスを1着30ドルから提供する。
月額会員は10万人超
月額会員は10万人を超えると言われる。顧客属性は15~65歳の女性と幅広い。直近では35~50歳の顧客の割合が増えているという。ハイマン氏は「社会人としてキャリアを築く上でベストな年代であると同時に、家族生活の中で最もストレスを感じる年代でもある。(便利なファッションレンタルを活用することで)自身の時間を充実させたいのではないか」と傾向を分析する。
また、このサービスがそうした幅広い層に支持される理由についてハイマン氏は、さまざまな洋服を借りられるという楽しみや利便性に加えて「サステナブル(持続可能性)」であることが重要なポイントだという。
短いサイクルで大量消費を生み出すファストファッションに対して、環境への影響などから世界的に風当たりが強まっている。レント・ザ・ランウェイが提案する「高級ファッションのシェアリングエコノミー」モデルは、サステナブルへの意識が高まる市場にマッチしたと考えられる。これまでになかった、かゆいところに手が届くサービスとして全米の女性から支持され急成長を遂げている。
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