コロナ禍の衛生意識の高まりやオフィスの働き方の変化によって、伸びているものがある。それが、ペダル式のゴミ箱だ。アスクルの商品開発の裏側に迫る本連載で今回取り上げるのは、エッセンシャルワーカーを中心とした現場ニーズをくんで投入した小型ゴミ箱だ。想定を上回る好調な滑り出しを見せている商品の企画から商品化まで迫った。
「コロナ禍で在宅ワークが増えたことから、オフィス用品の需要にも変化が見られる」。こう話すのは、アスクル家具商品事業部の山下愛加氏だ。
低調な商品がある一方で、好調に推移している商品もある。2021年2月にコロナ禍の顧客ニーズに応える形で発売されたアスクルのオリジナル商品、小容量のペダル式のゴミ箱がその一例だ。
20年3月以降、新型コロナウイルス感染症対策による衛生意識の高まりから、アスクルのゴミ箱は2桁成長をする月が目立ってきていた。詳しく調べると、非接触でゴミが捨てられるペダル式のゴミ箱の売り上げは前年比で約3倍と急伸長。また、容量にも変化の兆しがあり、小容量タイプが売り上げを伸ばしていた。加えて、色分別ができるゴミ箱も全体の23%を占めるなど、人気になっていた。
そこで、「ユーザーが求める、ペダル式・小容量・色分別という3つのポイントを備えたゴミ箱を開発することで、コロナ禍でもエッセンシャルワーカーを中心に支持を一層集められるのではないかという仮説を立てた」(山下氏)。
高い衛生意識から非接触のゴミ箱のニーズが急増
仮説を検証するに当たり、それぞれの視点でユーザーからの支持を得られるかを詳しく調べることにした。
まず、1つ目のポイントである“ペダル式”のゴミ箱の需要について。調べてみると、ある教育現場でのガイドラインで、感染予防のために廊下などに専用のゴミ箱を設置するといった工夫を行うこと、特にペダル式ゴミ箱が推奨されていることが分かった。
次にペダル式の業種別の販売実績を見ると、医療機関や介護福祉、教育といったエッセンシャルワーカー関連が上位を占め、いずれも高い伸長率を記録していた。加えて、ゴミ箱全体の売り上げは前年比83%と不調だった製造業でも、ペダル式は149%と伸びていることも判明。「エッセンシャルワーカーだけでなく、他業界を含めてペダル式のニーズが高まっていると判断できた」(山下氏)。
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